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▼ グローイング・アップ




いつもの軽口が流されずに拾われて、とんでもない事態に陥った。

べつにこんなこと、本気で望んでいたわけではない。
ただ、バスケい於いても勉強に於いても、周囲の評価や生活環境、すべてに於いてオレよりも上にいる赤司の嫌がる顔が見たかった。そんな軽い気持ちでオレは常々赤司に下半身ネタを振っていた。
それが、まさか、拾われる日が来るなんて。
思ってもない状況に、正直困惑しながらも赤司の体に触れてみたら。

のっぴきならない状況に追い込まれたのは、オレのほうだった。



ここにあるのは完璧なスリーサイズを誇る柔らかい体でも、撫でれば濡れる穴でもない。
肌が白いってのは、脱がさなくても分かっていた。毎日毎日顔を見ている関係であり、着替えているところなんかも数え切れないほど見かけている。
うちの部の練習量は半端ない。それは副主将であり主将のお気に入りでもある赤司とて、例外ではなく。成長期とは言え、鍛え上げられた体はそれなりに堅く締まっていて、そこに女っぽさなどこれっぽっちもないはずなのに。

服を剥いた下半身が、予想以上に未発達だった。
普段目にする事の少ない肌の範囲が、おそろしく白かった。

まずはその視覚的要素が、オレの頭をどうにかして。
赤司の了承を待たずに得た感触が、更なる混沌を産み出した。


「灰崎…ッ、やめろ!」
「…っ!!」

焦燥感の強い声でストップを掛けられはっとなる。
手を止め、顔を上げ。そしてまた、とんでもないものを見せられた。
「わ、ワリィ…」
「…そう思うなら加減をしろ。…それでよく、人のことを稚拙と罵れたものだな」
「うるせーな…、オレだって、野郎のチンコ擦るのなんざ初めてなんだよ。…こんなモン」
「不快ならば無理に触らずともいいよ。…オレは、お前の愛撫で勃起することはなさそうだ」
「……」

先に赤司にオレのをフェラさせたときは散々だと思った。
たどたどしくてさほど勢いもない。口に含んで抜き差しをするだけのぬるい動作に加え、歯を立てるようなやつだ。自称処女でもここまで下手な奴はいなかった。
そんな処女以下の野郎に咥えられ、ある程度勃ったのは赤司の言うとおり事実だ。何も言い返すことが出来ずに睨みつけると、それで赤司は余裕を回復させたのか。僅かに笑みを浮かべ、オレの顔に手を伸ばしてきた。
「…んだよ」
「愛撫の巧拙はともかくとして、灰崎。…これで、お前は満足か?」
「……は?」
「オレたちは互いに互いの愛撫では射精に至ることはない。その確認が取れたのだから、もういいだろう。そこを退け」
「…ああ、…そう言う話だったっけ」

確かにきっかけはそんな会話からだった気がする。
こいつはやっぱり冷静だ。オレはそんなこと、すっかり忘れていた。
誰かさんのせいで。

「灰崎?」
「…なァ、赤司。オレ、言ったよな?」
「え?」

まだオレの頭は冷静にはなりきれない。
顔面に添えられた赤司の手を取り、立ち上がり。その手首を背後のロッカーに押さえつけながら赤司を見下ろし、教えてやる。
「オレは外で出すのがキライなだけだ。べつに、イけねーわけじゃねーぞ」
「…そうか。だけど、オレは」
「お前は、性感帯が別のとこにあんじゃねーの?」
抵抗もなくオレに押さえつけられた赤司が、怪訝そうな眼差しを上げてくる。それに笑い返しながら顔の距離を少し詰め。
「聞いたことあんだよな。男の性感帯は、チンコだけじゃねぇって」
「何を…」
「こっち、使わせろよ」

片手で押さえつけたまま、反対の手を赤司の腰に回し、さらに後ろへ。ケツの割れ目に指を沿わせると、赤司はびくりと肩を震わせた。
「な…っ」
「…オレの好きにしろ、っつったよなァ?」
「何を…言っているんだ?お前は、」
「今させねーと、明日も咥えさせんぞ」

まるで勝ち目のない賭けだった。
いま赤司がこうしてオレに好きにされているのが異常な事態だ。いつもの赤司なら、まず乗ってこなかった誘いに乗り、ヘタクソなフェラを施してきた上にオレに自分のチンコまで触らせた。ここまで赤司のガードが崩れることは今までになかったし、恐らくこの先もない。
いましかない。今日しかない。だからオレは、赤司の気まぐれに賭けて脅迫した。

そしてやはり、赤司はおかしかった。
絶対に折れるはずのない脅しに対し、やや戸惑う視線を彷徨わせた後。
「…今回限りだ。次は、ない」
弱弱しく呟くという、異様な回答を絞りだしてきたのだ。



ほとんど引きずるような形で赤司をシャワー室へ連れ込み、こっちに背を向ける体勢を取らせて堅いタイルの壁に押し付けた。
男同士のセックスなんざ経験はない。それでもまぁ、突っ込むべき穴が何処なのかくらいは知ってるし、そこが自然に濡れないことも重々承知の上だ。どっかの誰かが勝手に置いてるボディソープを手のひらにぶちまけ、軽くこねてから指を赤司のケツに当ててみる。
「…ちょっと力抜けよ」
「…抜いてる、つもりだ」
「マジかよ?これで?もっと柔らかくなんだろ。お前柔軟ときむちゃくちゃ曲がるじゃん」
「…人を軟体動物のように言うのはやめ、…ッ!」
「よしよし、入るじゃん」
片手で腰を掴み、ソープまみれの指を強引に突き入れる。赤司の体は目に見えて硬直している。
やはり一筋縄ではいかなそうだ。指を入れたまま、片手を上半身に持っていく。女相手にするように胸をいじってみたが、揉めるものもないここはやはり反応が薄い。
ゆっくりと焦らすように指を下へずらしてみる。柔らかくもない腹は綺麗に削げていたが、感触だけだと骨と皮だけしかないようにも思えた。だが、触り心地はさほど酷くもない。
むしろ、胸がデカイってだけが取柄のぶよぶよした体よりはイイかもしれない、なんて馬鹿な考えが脳裏を過ぎる。

「は、灰崎…っ、一度、指を、抜け…っ」
「あ?…いや、抜いたら次入らなそーじゃん?」
「…ッ、動かすな!気持ちが悪い…」
「あれ?割とイけそー?」

赤司の命令に逆らって、中で指をゆっくり回す。動かせないことはない。ただし、赤司は心底嫌そうに首を振っているが。
時間を掛ければほぐれることはほぐれるかもしれない。そう考えながら納めた指は動かし続け、外に出てる片方の手を更に下へとずらしてく。

「…ッ!!」
「お?…んだよ、赤司、やれば出来んじゃん」
「は、離せ…ッ!誰が、握っていいと言った…!」
「言われてねぇけど、…あー、やっぱ、お前ここ性感帯なんじゃん?…カタくなってきたな」

さっきは無反応だったチンコだが、今は割と成長の兆しを見せている。
この年にしてインポってのはあまりにもな話だ。よかったな、赤司。お前もちゃんと、男だったよ。
安心させてやるためにより強く擦ってやる。さっきよりも丁寧に、タマも揉んでやる。そうしていると現金なもので、赤司の体はみるみる脱力して行った。
「う…、灰、崎…ッ、もう、…やめろ…っ」
「んだよ?気持ちいんだろ?…こっちもだいぶほぐれてきたし」
「嫌だ…、あ、…ッ」
額を壁に擦りつけ、ふるふる頭を振りながら。快楽を拒絶しようとする後姿は、赤司らしいと言えば赤司らしい。それでもやっぱ、体は正直なモンだ。
中に埋め込んだ指は関節が曲がるくらいの余裕を得ている。試してみた。赤司の体が、大きく跳ねる。

「…って、え?何?……ココ?」
「ッッ!!や、やめろ…ッ!きもちわる…っ」
「いやいや、絶対ェ、ココだろ?お前の…」
「ひ…ッ!」

ビンゴ、と胸中で叫ぶ。激しく反応した箇所を指で強く押しやれば、もう一度跳ねる肩。当たりだ。開発した。これでコイツは。

「…いいぜ?赤司。好きなだけ悶えろよ。ちゃーんと見ててやっからなァ?」
「…っ、く、…ちが、う…オレは、こんな…ッ」
「違くねーよ、…おー、コッチもデカくなってんじゃん」
「ひァ…ッ!ぅ、あぁ…ッ」
壁にへばりついて逃げようとする腰を、チンコ握った手でこっちに引き寄せやりたい放題いじりまくる。ヤベェ、面白ぇ。
あの赤司がこんな風になるとは。予想だにしなかった。出来るはずもない。あの赤司が、だ!
常に無表情で冷静で済ましたツラして人を見下した態度でエラそーな口ばっかきいてるあの赤司が。エロいことにはてんで興味ありませんって清純ぶった箱入り御曹司の赤司征十郎が。このオレの手によって腰をくねらせヒィヒィ喘いでいるこの光景は。

「…たまんねぇな」

優越感と達成感で高揚した感情を、押さえることなど出来やしない。
赤司の変化に夢中で気付かなかったが、オレの下半身も相当キてる。
「…赤司」
びくびく跳ねる背中に覆い被さるくらいに密着しながら、耳元で声を出す。また震える。そうか、コイツ、耳とか弱いんじゃね?
「あ、ぅ…、あァ…ッ」
「…入れるぜ?」
「や、だ…っ、やめ、…うぁ…ッ!!」


史上最高の盛り上がりを見せる猛々しいブツを持ち、指を引き抜いた穴へとあてがう。
やめろ?冗談じゃねぇ。やめてたまるか。お前の化けの皮、全部引っぺがしてやる。

「……赤司」

息を詰めて、名前を呼ぶ。
ついでにこれはサービスだ。思ってもないこと、囁いてやる。

「好きだぜ」

その瞬間、全身の力が抜けた赤司ががくりとその場に膝をつき、上手い具合にケツを突き出す体勢になったことで赤司のバックバージンはオレにまんまと奪われた。




ぐったりした体を流してやり、服を着せ、タクシーの手配までしてやった。
ここまで甲斐甲斐しく事後の世話をしてやっても、赤司はオレを睨んでいる。

「…目つき悪くなってんぞ、いつもの優等生ヅラはどーした」
「他に言うことがあるだろう」
「え?何?……お前こっちの素質あんなァ?」
「……」
「…悪かったよ、無理にして。明日の部活は休め。主将にはオレから言っとくから」

始めたときは双方の合意があった。だが、途中から箍が外れたのは認める。赤司が本気で嫌がっていたのを、力づくで押さえつけたことも。
ムカつく奴だ。何とかしてこの涼しいツラを歪ませてやりたいとも思ってた。それでもこれはやり過ぎたと、反省は一応している。

「…無理にとは、思っていないよ」
「は?」
だが赤司は否定する。あんだけ喚いといて、実はそうじゃないと。目線を床に落とし、小さな声で呟いた。
「お前が好意を口にしたとき、どうされてもいいと考えた。たしかに体の弛緩はあったが、抵抗する手段を講じることをやめたのは、…お前に任せてやってもいいと思ったからだ」
「あ、赤司…?」
「勘違いするな。今回のセックスは、合意の上での行いだ」

下がった視線をゆっくりと持ち上げ、オレを見据える目には覚えがある。
今まで散々見せつけられた、人を見下すイヤ〜な目つきだ。
それで赤司の考えを掌握する。自分は決して、相手の力に屈したわけではない。
奪われたのではなく、哀れな物乞いに与えてやったのだと。強気な眼差しは如実に語る。

目つきひとつでここまでハッキリと意思をぶつけてくる。赤司って奴は、本当に嫌な野郎だ。
事後、あんなに丁寧に扱ってやるんじゃなかった。オレの労わりを返せ。…無理だな、オレが勝手にやったことだ。こいつが感謝するはずもない。
諦めのため息をつきながら額を押さえ、天を仰いだ。

すると赤司は再びオレから視線を外し、小声で呟く。
「…許すべきでは、なかったな」

赤司が何を後悔しているのか。
目線を向けない赤司の考えまで、オレに読み取ることは出来なかった。










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