Dear my LUCCHINI!


※attention!
ベルナルド×ルキーノ
2012スパーク無配
ラキショ4で完成版頒布予定
ルキーノ女装あり
春CDのgood-bye angelネタですがルキーノルートでもベルナルドルートでもありません



「というわけで、だ」
 幹部筆頭、ベルナルド・オルトラーニの執務室。ベルナルドはデスクに向かって座り、その向かい側には幹部第二位のルキーノが立っている。
「どういうわけだよ」
 ルキーノは眉尻を下げて漫然と立っていた。ベルナルドに呼び出される覚えがない。シノギで大きな変化があったわけでも、幹部の上二人が内密に話さなければいけないようなこともなかったはずだ。何の前触れもなく突然呼び出されて部屋に来てみれば、ベルナルドが真剣な表情を浮かべて眼鏡を光らせていた。
「覚えがないのかい?」
「覚え? 俺が何かしたってか、筆頭殿」
「ああそうだ。間違いない」
 淡々としたベルナルドの声に思いを巡らす。ここ最近、まずいことは何もしていない。奇妙な金は動かしていないし、ジュリオから受け取った麻薬のラインの一本化も順調だ。
「我らがカポが金を欲しがるなんて珍しいと思わないかい」
「……ああ」
 ようやく腑に落ちて、溜息と一緒に声を吐き出した。
「ジャンが金を欲しがる直前に一緒にいた人間が浪費家だとすれば、彼がそれを必要としていた、と考えるのが無難じゃないかと思ってね」
「浪費家とは酷い言い種だな。俺は必要なところには金を惜しまないだけだ」
 最近、ルキーノとジャンが一緒にいて、金を使ったことは一つだけだ。対ウェイバーのために参加したオークションで侯爵夫人の時計を落とした。思い当たるものはそれしかないが、ジャンは誰にも言わないと約束してくれたはずだ。あいつが約束を破るとは思えない。
「それを筆頭殿に言う必要が?」
「そういうわけじゃない。だが、経費の私的流用は重罪だ、早く白状して潔白を証明した方が良い」
「私的流用、って、使い込んだわけじゃない、返す。俺がジャンにすぐに返せば済む話だ」
「そうか。だが残念だがお前の敬愛するカポはまだ借金の返済をしてなくてね」
「まだ、って、まだ三日しか経ってねぇじゃねえか」
 随分と引っ掛かる言い方をする。
「それで、結局何に使ったんだい」
 何があっても俺の口から言わせる気だ。こういう時のベルナルドは蛇よりもすっぽんよりもしつこい。どれだけ抵抗しようともおそらく無駄だ。情報を引きずり出される。この男は、情報というものには誰よりも執着する。
「……時計を競り落とした」
 出来る限り最小限の情報流出で済むようにルキーノは短く言い捨てた。だが、ベルナルドは先を続けろという風に黙ってルキーノを見ている。
「レターケースの代わりに時計を買った、それだけだ」
「それだけ? そもそもレターケースを買うつもりはなかったんだろう? 値段をつり上げてウェイバーに金を使わせることが目的だったはずだ」
 何も話してないが、お見通しってところか。これだけでは納得してくれなさそうな様子に重い溜め息を身体の奥の方から押し出す。
「あれは、侯爵夫人の懐中時計は、元々俺のものだった。だから買い戻した。金も近いうちに返す。以上だ」
 それだけ言って、一呼吸置いて部屋を出ていこうとして、失敗した。一呼吸おいたのがいけなかった。
「元々自分のものだったからといって執着するようなお前じゃないだろ。あの家だって、なかなか買い戻さなかっただろう」
 こいつを誤魔化せるヤツが、出し抜けるヤツがこの世界にはいるのだろうか。味方にいれば頼もしいが、対立するとこうも厄介だ。
「……俺の親父の特注の品だった。だから、だ」
「それ程大切なら今も持ってるんだろう? 見せてくれ」
 イヴァンのようにシットファックと喚き散らしそうになるのを抑える。
「――上司には部下のプライベートを侵害する権利があるのか」
「失敬な、部下の大切な情報は把握しておきたいってだけさ。何かの時にそれが弱みになって付け込まれるかもしれないだろ」
 そう言われると弱い。二年前のことだって、どれだけゴシップ誌に書き散らかされたか。さらにその昔のこの事実が明るみに出たところで組織に影響はないだろうが、ルキーノには、ある。タマなしだとか呼ばれるのはごめんだ。
「……ヴァッファンクーロ」
 ぼそり、と負け犬のように零した言葉にベルナルドがにやりと笑ったのが視界の端に見えた。くそ、馬鹿にしてやがる。ジャンの野郎は本当に口を割らなかったのか? 内ポケットから渋々と懐中時計を取り出す。いつも持ち歩いているわけではない。二度と面倒なことにならないように金庫にでも預けに行こうとしていたところだった。厄介事はここにあった。ほらよ、とベルナルドに渡すと、ベルナルドが手のひらに乗せてしげしげと眺める。
「へぇ……これは良いものだ」
 外側を眺めてふむ、と考え込む素振りを見せ。それから蓋を開けて、いよいよベルナルドの瞳が輝いた。かちり、と音がする。畜生、絵が動くことに気付かれた。
「なるほど、俺にとってはこの絵だけで一五〇〇ドルの価値がある」
「っ」
 息をつめて、ルキーノは木偶の坊みたいに立っていた。
「これはお前だな、ルキーノ」
「……そうだ」
 ある意味一番知られたくない相手に知られてしまった。昔。小さかった頃、ルキーノは女装していた。というかさせられていた。ルキーノの父は女の子を欲しがっていた。それでいて生れたのがルキーノで、病弱で、細くて、可憐であったがために、女の子として育てられ、女の子の服を着させられていたのだ。
「ウェイバー氏とは元々縁があったらしいな」
「レターケースの件だな。そうだ、良いもんじゃないけどな」
「なるほど、ウェイバーがお前のケツの穴を付け狙うのも分かる気がするよ」
「なっ、カマ掛けやがったのか!」
 既に知っていた。そこまでは報告していない。とすればベルナルドの情報網に引っ掛かったか、ジャンが可愛いお口を開いたかのどちらかだ。
「どうだろうね?」
 ベルナルドはしれっと言いながら時計をデスクの上に置き、屈んで自分の足元を漁り始めた。デスクの下だから何をしているのかも、何があるのかもわからない。がさごそと音がするだけだ。
「この時計は一五〇〇ドルだったね」
「あぁ」
 嫌な奴に借りを作っちまった。
「この利子は高くつくぜ?」
「……言い値で払う」
 それで借りがなくなるなら安いものだ。
「というわけで、だ」
 ベルナルドが机の下から顔を出した。手に持っている、何か。何か、じゃない。それは服だ。
「これを着てくれ」
「何をどうしたらそうなる!」
 ルキーノはついに叫んだ。ベルナルドがにっこりと太陽のように素晴らしく眩しい笑みを浮かべながら翳したのは、ひらひらとフリルが付いている女物の服だった。だが、女物にしてはサイズが大きいように見える――ルキーノでも着られそうに見える。ベルナルドの後ろには窓から差し込む日光の後光が射していた。
「いつから準備していやがった」
「オークションの後、その日のうちにジャンは俺に詳細を報告してくれてね。本当はその日のうちにお前を呼びたかったんだが。これを作るのに三日もかかっちまった」
 カマを掛けたどころの話ではなかった。
「で。俺がなんでそれを着る話になるんだ」
「俺が見たいからだ」
「……裏表のない奴は好きだぜ」
「それは光栄だ」
 断れるわけがなかった。ベルナルド相手なら、どんなことだって断ることはできない。弱みを握られているからでは、ない。が、着たくない。女物というだけれはなく、これは女中が着る服だ。黒く丈の短いスカート、白いフリルのエプロン。
「だが、それを着るくらいならいくらでも払う」
「そう言うと思ったよ」
 くい、と眼鏡を人差し指で上げながらベルナルドが立ち上がる。みしり、と椅子が音を立てるのが不吉に思えた。ルキーノの方に近付いてくる。目の前に立たれて、顎を掴まれた。少し上を向かされて、目の前に懐中時計がぶら下げられた。
「本当はこういうのは好きじゃないんだが……精巧な作りだ、落ちたりしたら壊れてしまうんじゃないかな」
「……カッツォ」
 呪いの言葉さえベルナルドは嬉しそうに笑って受け止めて、ソファに深く座った。投げるように押し付けられたメイド服を握り締める。皺が出来て着られないくらいぐちゃぐちゃになれば良い、と思ったが、それは思いの外丈夫だった。悪魔でも召喚したらこれは消えてなくなるだろうか、いや、今目の前にいる眼鏡をかけてにやにや笑っているこいつこそが悪魔だから意味がない。
「絶対に似合うと思うぜ」
「俺に着せるくらいならジャンに着せろよ……」
 横幅があって縦にも長い俺が着るよりはジャンに着せたい。あの金髪。きっと黒い女中服がよく似合う。ルキーノはそんな妄想をするしかなかった。着るしかない。悪夢だ。悪夢が現実になった。きらきら光るジャンの金髪。短いスカートからすらりと覗く白い肌のむちむちとしてすらりとした足。
「はぁ……」
 思わずため息が声になる。
「溜め息を吐くとその分だけ幸せが逃げる」
「逃げてなかったらこうなってはいないな」
 せめて見られずに着られれば良いのに、ベルナルドはソファにどっかりと座ってすっかり観客になっている。上を脱いでこの服を着て、それから下を脱げばマシだ。ジャケットを脱いでせめてもの抵抗にベルナルドに投げつける。ネクタイを解いて、シャツのボタンを上から順番に素早く外していく。ゆっくり外せば焦らしているように見えるだけだ。女のそれなら盛り上がるが、俺がやっても仕方がない。潔く脱ぎ捨てて、全部まとめてベルナルドに投げつける。それからメイド服を頭から被ろうとした。
「先に下を脱いでから着てくれよ」
 釘を刺されてスラックスを脱ぎ捨てる。すうすうする。落ち着かない。そわそわする。
「忘れるところだった。これと、これも」
 ぽい、と渡されたのはストッキング、ショーツ、ガーターベルトの一式。全て揃いの薄い黒のレースで出来ていて向こう側が透ける。屈辱的な気持ちになりながら靴を脱いで靴下も脱ぐ。流石にこれをベルナルドに投げつけるはやめた。
「ガーターベルトは正しい順番で付けないでくれ。ショーツを履いて、それからガーターベルトだ」
「わかった」
 大人しく従う。口ごたえすれば相手を喜ばせるだけだとルキーノはわかっていた。いつもの自分がそうだからだ。
「やけに素直だな」
「抵抗しないと燃えないタイプか」
「これも悪くない」
パンツを脱いて床に落とす。無防備に晒された急所が外気に晒されてふるりと頼りなく震えた。パンツを穿かないでいるのと透け透けのショーツを穿いているのとどっちがマシだろうか、と考えて結論は出なかった。ショーツに足を通していく。柔らかな生地と内腿が擦れてぞくりとした。これもきっと特注だ。上まで持っていくと締め付けられて、陰毛が透ける。
「良い眺めだ」
「これで楽しめるなら豚の女装でも楽しめそうだな」
「豚? まさか。お前だから楽しいんだよ」
 羞恥心を紛らわすための軽口に直球に真面目な返答が来て顔から火が出た。
「顔が赤い。それに、勃ってる」
「黙ってろ」
 ベルナルドの言う通り、ルキーノの足の間には熱が集まってきていた。緩くだが、頭を擡げ始めている。ショーツの上からガーターベルトを付ける。恥ずかしい部分が少しは隠れてくれるかと期待したが、それは簡単に裏切られた。膝より少し上まであるストッキングを穿いてガーターベルトで留める。いっそ殺してくれと思いながらメイド服を頭から被った。膝よりも少し上のあたりでスカートの裾が揺れている。ペティコートで肌が擦れて擽ったい。少しでも動くとスカートが揺れてガーターベルトのレースが見えそうだ。無言で渡されたヒールの高めなエナメルの黒い靴を渡されて無言で履く。
「最高だ」
「俺は最悪の気持ちだ」
 感嘆の溜め息混じりに上擦った声で言ったベルナルドに、不幸のどん底というような溜め息を吐いてから言った。
「そうか? 最高に勃ってるじゃないか」
 そう、何よりも何よりも残念なことに、ルキーノの前は勃っていた。スカートを持ち上げる程に。
「可愛いな、ルキーノ」
 ルキーノは震えて立っていた、握り締めた拳には力が入りすぎて関節が白くなっている。それに、足の間のそれは、勃起したペニスは、刺激を求めて震えている。
「どうして欲しい」
「……脱がせてくれ」
 蚊の泣くような声にベルナルドがくすりと笑った。
「面白い冗談だ」
 さて、とベルナルドが立ち上がる。ルキーノの目の前に立つと、ヒールのせいもあってベルナルドの方が少し背が低い。ベルナルドの細い指が伸びてきて人差し指の先が頬に触れる。それだけでみっともなくびくりと肩が震えた。指が顔の輪郭をなぞって顎に辿り着き、そこからさらに首筋を辿って喉仏を擽られて、くぅ、と情けない声が漏れた。襟に指が掛かる。その時。
「あれー? 何楽しそうなことしてるのん? 俺だけ仲間はずれ?」
 ノックの音がして、止める間もなくドアの開く音がして、声がした。
「っ、ジャン……!」
「仲間外れになんかしてないよ、ハニー」
「あらそうなの、ダーリン」
 首を傾げてジャンが楽しそうに笑う。
「おい、ベルナルド、どういう、」
「しまった、鍵を掛け忘れた」
 どういうことだ、と詰問する前にベルナルドが白々しく言った。わざとに決まっている。ジャンが後ろ手に鍵を閉めた。かちりと音がする。
「ジャン、見るな……」
 大切な相手にこんな姿を見られるのは、無理だ。それなのに、じわりと先端が濡れたのがわかった。
「まあいいじゃんいいじゃん、楽しもうぜルキーノ!」
 へらへら笑いながらずいずいと近付いてきたかと思うと、ジャンはルキーノの足元に膝立ちになってスカートの中に顔を突っ込んだ。


【続きはラキショで!】
(予定は未定)



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