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「お、うまっ」


オレは喫茶店で注文したコーヒーを一口呑んだ。
香りよし、味よし、なんも文句なんかないなこれ…



「喜んでもらえて何よりです」


向かい側の席に着いている白馬が嬉しそうに笑いながら、自分も頼んだコーヒーに口をつける。




白馬とは恋人という関係になってから約三ヶ月。
デートはお互いに忙しいからあまりしてないけど、久々にデートをすることになって今してるところなんだ。


まぁデートって言ってもホームズを語ったり、美味しい喫茶店探しとか図書館で本読んだりとかで、普段と変わらない。

白馬といて楽しいから俺はそれだけで十分。



だって好きな人と一緒にいられるだけで幸せだから、だから俺は我が儘を言う気はない。



……たまに嫉妬して白馬に迷惑掛けそうで怖いけど。




「あっ、白馬君だ!!」


「キャー!白馬君!!!」


ほらまただ。



白馬は怪盗KID専門の探偵で有名だ。
外見よし、内面よし、すべてが完璧に近い白馬は女子に人気だ。

白馬と同じ学校だと思われる女子は顔を赤くしながら手を振っている。
それを答える様に白馬も微笑みながら手を振り返す。





………ほらまただ
俺、すごく心が痛い

嫉妬してる……




「工藤君…?」


「え?あ、あぁどうした??」


「いえ、ただ考え事をしていたので。何かありましたか?」


「……なんでもねーよ。ちょっとボーっとしただけだよ。それにしてもここのコーヒーは美味いな」



話を振れば白馬は「あ、ここのコーヒーは…」と楽しそうに喋り出す。


それをオレは相打ちをし、ニコリと笑う。





このまま小さな俺を見ないで
こんな小さな俺…白馬には見せれない-----














****

次の日


白馬が俺んちに行きたいと言い、俺は快く了承した。



あまり白馬は我が儘を言わないから、珍しいなって思ったけど嬉しかった。
だって家が気になるってことだろ?



…たぶん



「工藤君の家は立派ですね。僕の想像通り、部屋の中は綺麗で…。工藤君らしいです」


「整理整頓くらいは出来てないと、書類とかなくなりそうで怖いしな」



俺のお気に入りのコーヒーを白馬に渡せば、ニコリと笑い「ありがとうございます」と、微笑む。
こういうやり取りは未だに俺は慣れていない。




ちょっと恥ずかしかったから、間際らすために俺もコーヒーに口をつけた。


すると少ししたら俺の携帯から着信音がして、手に取る。
ディスプレイ画面を見れば"服部平次"と書かれてた。


………あいつ本当に暇だよな




「わりぃ白馬。服部から電話掛かってきたから少しいいか?」


「…えぇ。僕のことは気にしないでどうぞ出てあげて下さい」



悪いなと片手で謝り、リビングから出て自分の部屋へと移動した。







「…オメー本当に暇なんだな」


『第一声がそれかいな!!わざわざ電話してるっちゅーのに』


「…………用がねーなら切るぞ」


『ある!!用があるから電話してるんや!!!切るなよ、工藤!』



本当に暇な奴だな……
つか、電話だからそんな大声出さなくても聞こえるし。



「んで?なんの用なんだよ」



さっさと用を聞いてやって、待たせてる白馬のところに戻らねーと…
これで約5分くらいかかってるし



『明後日から一週間、空いてるか?』


「明後日?まぁ…空いてるは空いてるけどよ。課題とか全部終わらせたし」



『さすが工藤や。実はな、ちょうどその日に東京に用がおうてのー。しかもちょうどその日から一週間休みなんや。ついでにゆっくりと東京でも観光しようと思うてな』



「なるほど?つまり用はたったの一日だけで、帰っても暇だから俺ん家に泊まりたい、ってことか」



『ま、そんなとこや』



けたけたと笑う服部にため息しかつけない。
まぁ慣れたことだけどよ……


…………こいつ本当に唐突すぎる。




でもこいつらしくて、何故か笑ってしまう。




すると俺のドアから白馬の声が聞こえると同時にドアが開かれた。

そこに現れた白馬の表情はいつもと同じ顔だが、少しだけ機嫌が悪そうな感じがした。



携帯のマイクを手で抑え謝ろうとしようとしたら、白馬は俺の携帯を取り上げ、咳払いをした。



「どうもお久しぶりです。西の探偵、服部君」


『なっ…お、お前はあのいけ好かない探偵やないか!??……なんで工藤の携帯に出てるんや』


「あぁそうですね…。僕が恋人の家に遊びに来てて、その幸せの時間をどっかのバカが邪魔してきたので、それを言おうかと思いましてね」



「ちょ…!!?は、白馬!???」


何軽く恋人って言ってるんだ!??
い、いやそうなんだけど…



俺が慌てるのを見て嬉しそうに白馬は笑った。



「そういうわけなんで、僕のに手を出さないで下さい。それでは」


電話の切れる音が聞こえ、パタンと携帯を閉じた。
俺が硬直してるのを見て、白馬は嬉しそうに笑って俺を抱き締めた。



……俺、めっちゃ顔が赤いって自分でも分かる



「……幻滅しましたか?」


「は?」


白馬の声はすごく苦しそうで…何処か泣いてる感じがした。
小さな声でポツリポツリと白馬は話続けた。




「嫉妬をする僕は、あなたみたいに大人じゃない…ですよね。すみません」


「しっ…と?白馬、オメー嫉妬なんかすんのか……?」


「当たり前じゃないですか。好きな人が楽しそうに電話をしてる所なんか見て、嫉妬しない人なんかいませんよ」


「……っ」


やばい…



どうしよう……






「工藤君…?」



俺、今すごく………




「嬉しい…」


「え?」


「俺もお前も同じ気持ちだったんだな、って…」


「工藤君…。それって……」


「俺も他の人に笑顔で向けるお前を見て、嫉妬、した……んだよ……」



うっわ…
俺、めっちゃ嬉しくて顔が変だって
つか、恥ずかしい……



「工藤君…僕は嫉妬してもいいってことですか?」


「だ、誰もダメだとは言ってないだろ…///」



白馬も俺と同じように嫉妬していたなんて、信じられなかった。
でも俺も白馬もお互いが好きで、嫌われたくなくてずっと抑え込んでいたんだ。



少し迷惑をかけたっていいじゃないか

少し我が儘を言ったっていいじゃないか









これが本当の俺達の幸せ----


END


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