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(!)こちらは神田くんの相当なキャラ崩れ満載の連載です。それでも大丈夫、寧ろどんとこいという方のみどうぞ。







































寒くなり、空気が澄みだした冬の季節。

それまた運の悪いことに、真昼でも気温がマイナスの町へと任務に出ることになっていた。

イノセンスは人間の嫌がる位置にいらっしゃるのだろうか?



「じゃあなまえちゃんお願いねー、てか帰りに雪見だいふく生チョコ味買ってきて」

『なにそのコンビニ買い出し感覚』

「冬に食べたくなるアイスNo.1だよね」

『………』



うそじゃんかー、てゆうか僕も行きたいー!とただ現実逃避したいだけの駄々をこねるいい年こいたお兄さんは放置しておこう。



『今思ったけど神田がいませんよ室長』

「…あ、ほんとだ。なまえちゃん連れてきて」



面倒くさいけど、優しく且つおしとやかな私は神田を迎えに部屋へ向かった。

こんこん、ノックをして声をかけるが彼の不機嫌な声がなまえの鼓膜を震わさない。

神田が遅刻なんて珍しい、もしまだ寝てたら瞼に目ん玉書いて開眼させておいてやろう、なんて考えながらノブをまわす。



『神田ぁー、入るよー?ちゃんとノックし………』



思わず悪戯に使用するつもりだったマジックが手からすべり、足元に跳ねる。

神田の漆黒の髪が裸の肩から流れた。

まるで鏡のよう、きっと今お互い同じ表情してる。

神田は真っ青な顔をこちらへ向け、


「俺って誰ですか?」



と小さく溢した。






俺の記憶知りませんか?






『……え、なにその迫真の演技。どうしたの神田、てか服着ろよ』

「俺は神田っていうんですか、ありがとうございます」



にこやかな表情で私の手を包むように握手した。

え、ちょ どうした神田。
何時からそんな爽やかイケメンキャラになったんだ。というか上半身よ、見てるこっちまで寒いわ。

そうか今までツンデレで言えなかったのか、可愛いなこいつー!!



『……いやいやいや!ないないないない!!』

「なにがですか」

『とりあえず君は服を着てからこちらへ来なさい』

「ああ!俺としたことが!
女性の前で裸なんて!」



なんだこいつ、どこかで聞いた似非英国紳士より大人な紳士振舞い!



「…すこしの間これ掛けてて」



そっとなまえの肩に自分の団服を掛けた。

これはもう真性の紳士!いや、ジェントルマン!

着替える神田を尻目に私は考えにふけった。

なんだっていうんだろうか、彼は一体どうしたんだろう。
激しく困惑したがわたくし生憎普段脳を使用しないので、考えるのは滅法苦手だ。

まあいいのだ、とりあえずは。



「お待たせしましたね。で、用件は?」

『任務だよ!任務!!』



はて?と呻く神田くん。
そんなきょとんとした顔初めてみた。
やばい、アレンにも見てほしい、笑いそう。



『とりあえず、一緒に来て!』



そういいながら神田の手をとり走って室長の元へ向かった。
神田くんは、うわわわわぁー、と情けない声を漏らしながら私の後ろで小走りしていた。駄目だ、面白すぎる。

ばたーん!、と大きな音を立てて室長室の扉を開く。
神田くん、後ろでビクッと震えた。



『失礼します!大変です室長!』

「……なんだいなまえちゃん雪見だいふく買ってきてくれた?」

『神田が!爽やかイケメンにバージョンアップしました!!』

「ええぇー!!
ってそんな冗談良いから早く雪見だいふく!」

「あなた、室長っていうことはかなり高い身分の方か何かですか?」



神田くんがしれっと言ってのけた瞬間、その場の空気が音を立てて凍る。

暫時の沈黙が落ちる。

きっと今、誰もが自分の中で葛藤しているだろう。
神田くんが冗談いってるよ、てか何その敬語、てか笑ったら叩っ斬られそうだけどが、我慢出来な…

ぶふぉっ!と一人の科学班の人が吹き出した瞬間、一気に笑いの渦。

神田くんはきょとんとして、なまえに「俺なにかしました?」と耳打ちした。

いや、違うのだよ。
昨日までの君とはあまりにも温度差が違うものだからみんなギャップ差に笑いが収まらないのだよ。



『……静まれぇぇーいっ!!』



なまえの制裁によって一気に再び沈黙を取り戻した。



『どうすんですか室長!神田故意じゃなくって無意識にやってますよ!』

「むふっ!ふふふは!…ふ、ふぅ、なまえちゃん、多分神田くん記憶喪失だよ」

『はっ!!?』

「なにか強い衝撃とかショックがあったんじゃないかなあ?」

『……じゃあ今回は神田の治療優先にして、任務はペア変えてください』

「「そんなっ!?」」



室長と神田の言詞が重なる。
いや、神田、お前は違うだろ。
まず自分のこと心配しろよ。
なんでショックうけてんの、おかしいだろ。



「もう他のエクソシストはみんな出ちゃって誰もいないんだよ、だいたい一人じゃ危ないし。
それに記憶喪失なんてそんな大したことじゃないよ、神田くんだし」

『神田どんだけ元気っ子だと思ってるんですか』

「俺は大丈夫です!それよりそんな危ないことをこんなか弱い女性にさせるわけにはいきません!」

『お前が言うな!』



なんだ、この神田くんの扱いの雑さは。神田くんだって生物だぞ。

まあ最も本人の意思が強いので、仕方なく一緒に行くことにしようか?

しかしまあ今、このジェントルマン神田が果たして使い者になるのかが一番の問題点だ。



「俺は大丈夫です、なまえは俺が守りますから」

『だからお前が言うな!』

「神田くんもそう言ってることだし、頼むよ」

『………』



とりあえず神田と二人、教団を後にする。

室長と科学班は大きな笑みを食いしばり、にこやかに見送ってくれた。
ぜったいあいつら私たちが出た瞬間から爆笑してるんだろうな。

列車に揺られながら私は思った。




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