04
『もー宿ついたからいいっ!降ろしてくれていいからっ!!』
「いや、部屋まで運ぶからちょっと待って」
『ほらっ!フロントのおじさんこっちみて反応に困っているじゃんかっ!』
「自慢すればいいだけだろ」
『!!』
ほっほー微笑ましいですなあ、と可愛らしい笑顔のおじさんが茶化すと神田くんは爽やかな笑みを浮かべ「若いんで」などとキャッチボール出来てない会話を返した。…いや違う、それはかなり下ネタに見られるじゃないか。よーし、夜はハッスルするぞーとか思われそうじゃないか。
部屋の前につくと、両手を塞がった神田くんの代わりに私がドアノブをまわす。神田くんはそのまま私をベッドの上にそっと寝かした。
『ごめんね、ありがとう。優しいねー』
「紳士として当然のたしなみだからな」
『キャラ被る!!』
神田くんは大きく目を開き驚愕の瞳を此方へ寄越した。
「誰と!?」
『ああそっか、神田忘れてるんだよね、アレンって「男か!なまえそいつと何かあ『ねえよ』
アレンって誰だよ!!俺のキャラと被ってるなんてとんだ無礼なやつだ!と憤慨しているがお前の方が後だしじゃないか、とは流石に言わなかった、私賢い。
『神田くんアレンとすごい仲わ……じゃない、仲良かったんだよー。それはもう兄弟のように』
「ぐりとぐらのように?」
『えっ!?ああ、そうだよそれそれ』
なんでそんなの覚えてるのか分からない。てか昔読んだのかな、あんな凜とした表情で「ぐりとぐら」を読む神田くん……。
「そうか、帰ったら早くアレンさんに会いたいなあ」
『ぶふっ!そ、そうだね会いたいね!!』
アレンいきなり神田くんにやたらとフレンドリーに話しかけられたりしたらどうするんだろ?…今から面白い。
神田くんは暫く夢の中のベストフレンド:アレンくんに思いを馳せていたが、また六幻を取り出し「六幻と戯れてくる」と、外へ飛び出した。
暫く天井の模様をただ見つめていたが、任務内容を確かめようともう一度資料を出してベッドへ倒れ込む。
ぱらぱらと捲りながら溜め息がこぼれた。
しっかし今回の内容はかなりどうでもいい気がして仕方ない。
……何故かこの池の魚だけが全部桃色になるそうだ。
わりとどうでもいいだろ、困るのは料亭くらいじゃね?とか思わず頭をよぎってしまう。
なんか恰好良いのが良かった!時間が止まる街、とか神隠し、とかそんなかんじの!!こんな生臭いのじゃなくて!
……そんな贅沢な文句いっちゃいけないな。
それにまあ人には迷惑かかっていないだけまだマシかな。
ふぅ、と再度一息つく。
いきなりドアが、ばーん!!と凄い勢いで開いた。
「なまえヤバい!!色々ヤバい!!」
『……なに?』
上半身裸の神田くんがふん、と鼻を膨らませ目を輝かせた。そして自身の右手にがっしりと握られた物を突き出し、
「見ろよ!ピンクの魚!」
『資料熱心に見てたんじゃないの!?』
なにが?と言わんばかりのぽかんとした表情で見つめる神田くんとぴちぴちと暴れるピンクの魚。笑っていいのかな?
魚はもう歯を剥き出し、戦意を剥き出しにして今にも神田の腕に噛みつこうとしていた。
「じゃあ返してくる。これぞcatch and release」
『黙ってくれて構わんよ』
どや顔の神田くんはぶんぶんと魚を振り回し、反動とつけると窓からそのまま投げて、拾ったと思われる湖に放り込んだ。
ぼっしゃーん!!という大きな音と共にさっきのフロントのおじさんの驚愕した声が聞こえた。
「ナイッシュー!!」
『いや違うから!だめだから!おじさんびっくりしちゃってるから!』
とりあえずもう一度任務内容の説明を繰り返す。
「イノセンスって大体こんなもんなのか?しかも此れで危険な任務なのか?」
『ぜったい違う』
エクソシストが常に魚臭いなんて悲し過ぎるだろ。
しかしなんでこの程度でコムイさんは「危険だ」と言ったんだろう。
ぱらぱらと資料を捲っていると、
『!!』
「な、なんだよ」
『……あ、あのピンクの魚、イノセンスの所為で人喰い科に進化しちゃってるんだって』
「えええええ!!!」
*next*
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