02

「こっちです、ほら」



アレンは自分より少し離れた位置をポンポンと叩いた。

そこベッドの上じゃない。



『………お邪魔します』



策士なの?

なまえはゆっくりと体を委せた。



「なまえ、男の部屋に入るっていうのはどういうことかわかりますよね?」

『えっ!?』



アレンは優しい笑顔のままいきなりなまえを押し倒した。



「誘ってるんですか、涙浮かべても余計僕が楽しくなるだけですよ?」

『ちょっ……や、だ!やめてアレンッ!!』



強引に衣服を剥いでいく。



あっという間になまえの真っ白な肌は惜しげなく晒された。



『だめだよ!あ……れ、んん!!』



神田、お願い、早く早く、帰ってきて。
私を助けて、

胸の中に神田への伝えたい気持ちがふつふつと湧いて弾けそうになる。
思わず気持ちが涙へとなりぎりぎりで抑えられていたのが流れた。

「……ばあか。
泣いてもそそってるだけですよ」

アレンは黒く笑う。



『……私はそんな尻軽じゃあないの!』

「…でも神田とは上手くいってない」

『!!』

「ほら、ね?図星だ。
なまえは意表を突かれたらいつもその顔をするから」



にや、と黒く笑う。
下からみたアレンは少年の面影すら残しておらず、その表情は大人の艶っぽさを表していた。



『そ、そんなことない!』



アレンは私の頬を撫で、



「でも確かにあのときのあの言葉に心は揺れた」

『!!!』

「………違いますか?」

『……そ、そうだよ』



観念して目を伏せる私にアレンは優越感の色を表した瞳を向けた。



『か、神田はっ!
優しくて、ちょっと口下手だけど私のこと想ってくれて。
私のこと愛してくれて……でも、』

「でも?なんですか?」



アレンは私から離れ、緩めたネクタイをもう一度締めなおして、そっとあたしを起こしてくれた。



『でも、神田の心を支配しているのはあの人だった!!
ちゃんと私を見つめて?
私だけを見て?
私だけに愛を注いで?』



なんでアレンにこんなこと言ってるんだろう?
ただ、今この溢れた感情は止めることは出来なかった。

それ位、私は神田を、彼を渇望していた。

「……なまえ、」



アレンは壊れ物を扱うかのように指先で頬を撫で、確かめるかのようにゆっくりと抱きしめた。



『うわぁぁぁあんっ!!
……ぅ、ぐすっ、』



アレンの腕の中は暖かくて、いい香りがした。

頬が触れ合う感触。
安心、愛情…色んな気持ちがアレンから流れ込む。



「僕ならなまえにこんなこと言わせないのに…。
なまえを全力で愛するのに…」

『あ…アレン…?』



彼の表情を覗くと、眉間にしわを寄せ、深く目を閉じていた。



「なまえ、僕は……っ」

『アレンっ!!』



ばっ!
両手で顔を抑えられ、目線の高さが合えば。

アレンの瞳から涙が溢れそうになっていた。

な、んで……?
泣いてるの?

思わず私はアレンの溢れた涙をキスで拭った。



「わぁっ!なまえっ?」

『どうして?どうして泣いてるのよ?』

「なまえ……やっぱりダメですか?

僕だったら」

『!』

「始めはっ!絶対叶わないからなまえを傷つけてでも一度だけでも僕のモノにしてしまおうと思った!

でも『もういいよ!!!』

「え?」



ダメだダメだダメ!!
このままじゃあ本当に恋に落ちる!

でも。



『……あれ…ん、神田にはっ……黙っててくれ、る?』



そっと顔を上げる。
涙が止まらない。
きっと今、ひどい顔をしているだろう。しかし今はどうでも良かった。

それぐらい、私はアレンに伝えたかった。



「……ええ」



踏み込んでしまった危険なゲーム。
終わりと告げる鐘が鳴らない限り、抜けることは出来ないでしょう。
しかし私は今魅了され気付かないのです。