夕暮れに溺れる


ばしゃぁぁん!!






『………』

「………」



静まる夕暮れ。
なんで、もう少しで、



『…水溜まりの前で転けるなんて、』

「大丈夫ですか?
……すみません、笑っていいですか、ぶはっ!」

『いいよって言ってないじゃん!笑うなよ!
これこそ水も滴るいい女でしょ?』

「………」

『そこ笑ってよ!』

「はっ」

『………』



最悪だ。
明日ももちろん学校あるし制服ぼちょぼちょだし。
鞄まで一緒に水溜まりにインしてる。
もうチャック開けれない。


『……しかも臭い』

「はい、かなり」



ダメだ、夕焼けがゆらゆらと揺れる。
瞬きしたらなにかが零れそうだ。


「……なまえ、」

『なに…?』

「しょうがないなぁ」



そういうと、アレンはオレンジ色に染めた白髪をゆらし、私に手を差しのべた。



『………』



私がぎゅ、と手を握り返すと一気にぐん、と引っ張り気付けばアレンの腕の中。



『うきゃぁあっ!?な何!』

「これで一緒ですよ」

『えっ!!?』

「臭い仲間です」



にこり、綺麗な笑顔。

あーあ。
水溜まりにさえはまらなければいい雰囲気なのに。



「水溜まりにはまらなくてもまたぎゅってしてあげますから、もうしないで下さいね」

『アレンのばーか』



ぎゅ、アレンが腕の力を強くした。
そして耳元で囁いた。



「も一回水溜まりにinします?」

『すみません』



もうすぐ日が暮れそうだ。
寒くなってきた。



「帰りましょうか」

『うん』



今日はよく眠れそう。