悪気は無いけど
今日は任務で北の寒い地方に二人佇む。AKUMAが大量発生してるらしい。ホント寒いのにいい迷惑だ。
赤くなった指先を温めるように息をはくが、白くなった。



「って!!!」



暫くの間、あまりにも寒すぎて唇が張り付き喋れなかった神田がやっとの思いで口を開いた。



『ん?どうしたの?』



私はというと、常に口が半開きだから問題はない。只、口のなかに雪が入る。



『こはっ!!』

「とりあえず口を閉じろ。それから、俺の自慢の髪を引っ張るな」



神田は半ば無理矢理口を開いたものだから、口の端が切れている。



『だって足元がグラグラだもん』



足元がおぼつかず、なかなか思うように歩けない。
しかも大きめな団服の裾を何度も踏んでしまうのだ。



「ほら、じゃあ」



といい大きな右手を差し出された。
優しさに甘え、左手を出した瞬間、



「痛てぇ!!」



神田の足につまずき思わずこめかみの髪を思いっきり引っ張った。



『……あ、ゴメン』



もちろん謝る気は全くと言っていい程無い。
口に雪が入るからだ。



「いいから行くぞ」



そう言い放つ彼は目元にうっすらと涙を浮かべていた。



『あぁ、かわいそうなユウちゃん』

「……誰のせいだ」



そう言い、歩きだした寂しそうな彼の背中を追いかけて走ったら自分の足につまずき、また彼の髪を引っ張った。



fin