2人は恋の急性期


ああ、まただ。

思い知らされる彼との距離。
繋いだ手が以前より大きくなっている気がする。
歩くときも前はあんなに早歩きだったのに気付けば私に合わそうとしてくれている。



「どうしたんだなまえ?」

『ええ!?あ、なんでもない』



ぼうっとしていた私の頭をぐりぐりと撫でて少しだけふわりと笑った。

ああ、確実に神田が男の人に、大人になってゆく。


あんなにぶっきらぼうで他人なんか考えられなくて前はいっぱい喧嘩したのに、今は直ぐに私を気遣う。



『……か、んだ、置いていかないで』

「……は?」



遠くなってゆく。

ずっと付き合ってるのに、貴方だけが成長してゆくばかり。私、なんにも変わらない。

何時か彼に相応な人が現れたら、神田そっちにいっちゃうのかな、

そんなの、嫌だよ。



『どこにも、行かないで、』

「何言ってんだかさっぱり分かんねえ」

『私ばっか置いていかないで』



彼の厚い胸板にすがりつく。
ああ、不安なの。
置いて行かないで。
手の届かない所に、行かないで。
彼は怒らずに自然と私の身体に優しく腕がまわる。



『……神田、何時の間にかこんなに背中が大きくなった、優しくなった、喧嘩も減った』

「…………」



前はずっと友達のようなくらい仲が良かった。
休日の度お互いの部屋に足を運び、下らないことで笑って、神田は怒って。たまに喧嘩もしたけど私がいつも不器用に先に謝る。

何時もそうだった。そう、これからもそのつもり、だった。

だけど君はどんどん大人になる。成長していく。
待つこともせずに、先々歩いてゆく。



「……なまえ、」

『…は、い』



顔を上げさせられる。

眉間に皺を寄せずに優しく見つめられ。



「俺は、お前がどんどん艶っぽくなっていくのが不安だった」

『え?』

「昔は男と間違われるくらいさばさばしてたまに同年代の奴泣かしてやがったのに髪も伸ばして、」


彼の指がそっと私の髪を解き、くるりくるりと弄んだ。
神田の頬は少し紅潮している、ああ初めてみる彼の顔。
なにか分からないけど胸が気持ちでいっぱいになる。割れてしまいそうなくらい。



「こ、こんなに……綺麗になって、よ」

『!!?』



な、なんて言った!?

心音が一気に早まり、自然と私の腕の力が強まった。

うわー、うわー!神田が綺麗とか言った!私に!私を見て!

目が合わせられない私の視線は神田の服のボタンを上下行き来して離れられない。



「だから、もっとふたりで先に進みてェんだよ」

『……それって、』



やっと顔を上げることが出来れば、神田も耳朶が真っ赤に染まっていて。

でも、視線は外さなくて。


少し背伸びをして彼に近付いてみる。
余計に心臓が破裂してしまいそうだけど。恥ずかしくて爆発してしまいそうだけど。
今は離れたくないの、もっと近付きたい。


自然と絡む視線、端正な顔が、彼の優しい吐息が掛かればそっと「……目、閉じろ」と囁かれ、瞳閉じればほら、









fin