嗚呼麗しき君

神田ユウとアレン・ウォーカーの激しい組み手からだんだんと喧嘩になり変わり、部外者を巻き込みながら喧騒が広がってゆく姿を隣に座るエクソシストのなまえと共に眺める。



「君も次に行くんですか?」

『いや行かないよ。痛いの嫌だし、そういうの向いてない』

「情けない。エクソシスト冥利につきます、くらい言わないと」

『強くない代わりに私は頭脳派なの。考えるの苦手だけど』

「…………」



彼女はとても不思議な雰囲気で今の私の任務対象外だけれどもとても興味深い。というか人に無干渉なのに人を惹き付けるモノがある。


『あー、でも神田に〈ヘボい奴はのたれ死ね〉って言われたからなー、鍛錬しなきゃ。
大体弱いんじゃなくてかよわいだけなのに』

「それ一緒ですよ」

『だって神田やリンクみたいに若くないんだから無理難題を押し付けちゃ辛いのに』

「冗談は良いですから」

『なんで?私もう成人してるよ?』

「だから……って、えええ!!?」


きょとんとしている彼女を上から下までじっくりと眺める。
何処が成人なのだろう、大人の風貌がまるでみられない。

ああ、ずっと年下だと思っていた。
背も私の肩くらいしかなく、時に悪戯に歯を見せて笑うその姿は本当に愛くるしいこどもそのもの。


「……嘘だ」

『びっくりしすぎだよ。なに、若々しい?』

「というか幼いの間違いかと」

『ひどいぞリンク君。わたくしでも傷つくぞ。
こうなったら化粧でもしようかな、』


あ、やっと気付いた。
いつも常に着飾らなく瀟洒なのに愛くるしくて大人の疲れとかをみせないのだ。それでいて年齢関係無く分け隔て無い接し方が好感を得られるのか。



『それで年相応になったら、ちゃんと振り向いてくれる?』

「……な、」



彼女はそう言ってまたあの悪戯なニカッとした笑みを寄越した。

本当に私はその笑顔に弱い。

でも君のその綺麗な顔を化粧で隠すのは勿体無い、なんて口が裂けても言えない。言えるわけがない。




「そんなの要りませんよ、」


僕はもう君に惚れてしまっているのだから。









fin