地球最後の日
明日、魔王の襲来のちに地球滅亡。人類皆破滅。



『嫌だあああ!!!』

「なんなんですか、なんかもううるさいし煩わしいし鬱陶しいし」

『……ひどい。
ノストラダムスだよ!大予言しちゃったんだよ?人類滅亡するんだよー!!』



なんでこの白髪は飄々と勉強してるんだろう。
放課後、夕焼けが差しているなか私たちは明日のテストの為の勉強をしていた、いや教えてもらっていた。
意外にも(と言ったら足踏まれたけど)アレンはちゃっかり勉強が出来る。うっかり馬に頭ひかれろ。



『でももう勉強したって意味ないよ!もうこの際だから好きなことしよう!』

「ぜったい嘘っぱちですって。てかなまえ勉強したくないだけでしょう?」



呆れ顔でアレンくんは吐くが断じてそんなことは無いのだ、うん。確かに勉強やりたくは無いけども。



『あと数時間しか無いよ!!誰と死のう!?うわああああ!!』

「そんな不吉なこと言わないでくださいよ」

『だって大予言!!』



しかしどきどきしながら学校に来たけども友達は誰も信じちゃいなくて、逆に「信じてるのー?そんなん小学生でも怖がってないよ」なんて言われて馬鹿にされた!この上ない屈辱!それはもうカノッサの屈辱!



「いや、もういいですから。今の範囲世界史じゃなくて地理ですから。しかも今数学してますからね」

『良くない!!まだやり残したことまみれだよ!まだマフラー編みきってないし、本読み終わってないし、絵本作家になってないし、NASAに就職してないし、サンタさんに弟子にしてもらってない!!』

「どんだけ夢あふれる若者なんですか」

『アレンなら死ぬときどんなかんじがいい?』

「僕は静かなところで知的な人にみとられて死にたいです」

『つまりこの状況と反対だね!』

「まあそうですね」



あはーモヤシ死ね、略してモヤ死ね。不届きものは皆ご飯食べてるときにむせて鼻に入って3年くらい取れなくなる刑に処せ。



『あーもう5時だよ!あと7時間しか無い!!』

「はいはい勉強してください」

『……まあ私アレンと死ねるなら本望です』

「僕は嫌ですけどね」

『モヤ死ね』



なんだよ、死ぬ間際くらい受け止めてくれてもいいじゃん。何処まで正直者なんだよアンピノキオめ、鼻低くなれ。私もう未練いっぱいで死ねんわ。



「折角良いこといって貰ったのに、まだ死にたくないですね」

『……え、』



アレンは顔を上げてにこりと微笑んだ。
綺麗な銀灰色の瞳が私をとらえる。
急に恥ずかしくなってきたじゃないか。
思わず目線を落とす。



「全部、録音しましたから」

『な』

「僕放送部なんで明日これエンドレスリピートしていいですか?」

『や、やめろおおおお!!』



なんという悪魔!間もなく襲来する魔王より恐ろしいこの天使の笑顔!



「消してあげる代わりに、今の言葉信じていいですか?」

『えっ、あ はい』



さっきみたいに元気に喋れない私は返事するので精一杯。
なんでこんな地球最後の日にうまくいくんだろう?
いや、これはつり橋効果?あれ、違う?ノストラダムスマジックか!略してダムック!!



「まあなまえの言う通り明日滅亡するんだったらこんな脅し怖くないはずなんですけどね、馬鹿なまえ」

『ちくしょー!!』



不覚!なんか私舞い上がってるみたいじゃあないか、馬鹿。私ちょっと海の藻屑になってくる。



「まだ信じてるんですか?予言」

『う、うむ』

「じゃあ今日は一緒に滅亡の瞬間を訪れましょうか」

『え!!』

「本望じゃないんですか?」

『仰る通りにございます』



ダムスさん、今回は見逃しとください。予言、外してください。


(地球最後の愛の告白!!)





fin