#実際の年齢からプラス10歳になったお相手を見た夢主の反応
※Xにて夢タグメモ様(@yumetagmemo)より夢タグ拝借したものをこちらへ掲載


「おい、なまえ」
「なー……えっ!!どうしたの!?」

昼食を摂っていたら後ろから呼び掛けられ、ユウだーなんて呑気に振り返ると、見慣れたいつもの眉目秀麗な顔のはずなのに、なんだかすこしだけ違和感。

ムスッとしたまま神田がガタンと乱雑に隣の席へ腰を下ろすと、そのまま気にも留めず「あのなあ、」から始まりなにか説教じみたトーンで話し始めたものの、なまえはさっきから感じる違和感の正体が知りたくって目の前でああだこうだと説明する彼の話もロクに聞きもせず、牙を剥く獣に丸腰で挑むが如くぐっと顔を寄せてまじまじと見つめた。

神田は突然なまえの整った顔に眼前を詰め寄られてしまい、燦然とした艶やかな瞳に真っ直ぐ捕らえられたものだから驚いて出鼻を挫かれてしまい、ウッと少したじろいだ。

そして尚もじーっと何も言わずに愛らしい表情で見つめてくるものだからだんだんと気まずくなってしまい、こっちの人の気も知らないでそんな事しやがって、と内心毒を吐きつつもついに居心地悪さに視線をぷいと背けてしまった。


向こうを向いたまま溜息をついて頬杖をつくそのなんだか艶っぽい神田の横顔に、なまえはようやく違和感の正体を発見してはっとする。


彼は今朝見た時よりもたった数十分しか見てない間に恐らく一回りくらい歳を重ねているようだった。

いつも纏っているピリピリした青い棘が抜け落ちて、なんだか抑えきれていない色気が余裕という形になって漏れ出ているような。

それに気付いてしまった途端に、なんだからしくもなく変に意識なんかしちゃって、さっきまで子供のように気になったからなんて安直な理由で引っ付いていたこの近過ぎる距離が恥ずかしくなってしまい慌てて離れた。

急に素っ気ない態度をとるなまえへ、彼は訝しげに眉間に皺を寄せて様子を伺っているが、残念ながら今はそんなこと気にするキャパも持ち合わせてなどいない。
嘘を隠すのが下手ななまえは不自然に視線を揺らめかせながらも拍動が速くなっているのを察されたくなくて、辿たどしく斜め下へ視線を落として話す。


ユウってばなんだかちょっと落ち着いて貫禄があって大人っぽくって。
こんな風に美しく歳を取ってゆくのかも。


「まっ!また変な薬とか被っちゃったんじゃない?
なんか雰囲気違う……」

「……ああそういえば、さっき化学班の奴とぶつかって10年年取る薬みたいなモン掛かったな」

「えっ!えらいこっちゃなのにそんなもの!?普通焦ったりしない!?」

「前と時と違ってガキになってもねえし、そんくらい別に変わんねえだろ」

「変わるよ!!?」

「なにがだよ?」

「なにがって……えっと、ほら、すごくかっこいいし……」


いつもなら大して意味も無さげにニコニコと大好きーなんて呑気な顔して何度も言ってくるクセして、なんだかモジモジしながら俯くその真っ赤な顔にようやく合点がいった神田は玩具を見付けたようにハッと悪い顔で笑った。

そしてさらさらと薄紫の前髪が流れ落ちてゆくのを敢えてゆっくり掬って耳にかけてやれば、指先が触れた瞬間あからさまに気が動転して林檎のような顔をしたまま、大袈裟に椅子を鳴らして1歩後退する。

ふーん、そんな顔も出来んのか。
たまにはこういうのも悪くないかもな。


29歳の余裕