最低
※どうしようもない下品ネタ
神田くんはすごく鈍臭い
大丈夫という方のみどうぞ















「ぐはうえぉっ!」



好奇心の中、最初に口から出たのは感嘆でもない自分でも聞いたことのない叫び声だった。
脇腹へ強烈な痛みが走ったのちに、臓器のひとつやふたつがやられたんじゃないかというくらいの圧迫感が襲い、寝そべる廊下の冷たさや無機質な硬さが気にならないくらい身体が酷く重かった。というか自分の身体じゃないかのようだ。鉛がのし掛かり横臥しているかのような。人肌程度の鉛。呼吸している鉛。……って。



「おい、何してんの」

「っ、なんでこんな所でへばってんだよ馬鹿!」

「私の上でへばる神田には言われたくないね!」

「……銃撃に襲われたから伏せただけだ」

「どんだけ常に命狙われてんのさ躓いただけだろ」

「お前もなんだよその格好は!」

「見たら分かるだろ全身モップだ!」

「横に緑の天才怪獣が居たら完全に5歳の赤い雪男になれるな」

「ですぞー!……いや違うって」



大体こんな所見られたらどうすんのアレンだったら確実に証拠徴収してティムで記録して金毟り捕られる!
というか神田が躓いたときに見事に私の脇腹にクリーンヒットしたのが今更じくじく痛む。折角のムッ……じゃない、モップスーツが。
背中越しの彼はなんか「六幻引っ掛かって立てない」やら言ってもたつく。早くしろって!なんでこんなとこでドジッ子属性炸裂するんだ!余所でしろせめて人の上でするな畜生!



「何してるんですか?」



卒然頭上から降った声は愉快そうな声音の、一番逢いたくなかった少年。
顔だけ上げれば。



「アレン……!」

「なに君達そういう性癖ですか、真っ昼間にコスプレして廊下なんて公衆の場で後ろから押し倒してるなんて」

「違う本当に違う!」

「おいモヤシ助けろ!」

「でも神田は上で六幻と戯れてますよなまえ」

「まだやってんのか!」

「六幻が足と廊下につっかかった」

「もはや自慰ですよね」

「うわあああああ!!」



なんなのこれ、ちょっと全身にモップ巻いて転がってやろうとしただけなのに。



「いやそれ可笑しいですからね」

「出来心と努力と僅かな可能性に賭けた挑戦だよ!」

「最初に本音言いましたよね」

「痛てェ!」

「もう神田は阿房払いの刑に処する」

「刀を取り上げて裸で追放するんですね、それなら助太刀致す」

「誰だよお前ら」

「そんな格好で言うなよ神田」

「モップのお前には言われたくねぇよ!てかそもそも廊下で寝そべンな!」



なんだよちょっとメイドに萌えてモップ持って掃除してるのとかまじやばいと思ってやっちゃっただけなんだから!萌えすぎてモップになりたいって思っちゃっただけじゃないか!



「お前のストライクの位置何処だ」

「ご主人様の為に懸命に掃除するとかまじやばい」

「ごみの塊がなに言ってるんですか。ティム、撮ったか?」

「やめろおおおおお!」

「あ、取れた!」

「ぐひょぅっ!」



神田の引っ掛かった六幻が勢いそのままでまた脇腹に入った。今めり込んだぞ、ぐりって、ぐりって!もうねAKUMAだったら絶対救済されてたね。だって今ちょっとヘヴン見えたもの、花畑とか手招きする死んだ爺ちゃんとか桃源郷とか三途の川とか見えたよ。召されかけたぞ許すまじ神田。



「もういいお前ら帰れ。神田、阿房払いの刑にしてやるからふんどし拝ませろや」

「穿いてねえって」

「神田はフィーリングですよ」

「まじで?其処まで穿いてないとは」

「穿いてるっつうの!」

「赤ふんどし?白ふんどし?」

「…………」



昔彼の大切な所グーパンしたらラビより苦しんでたな。あれはきっと布切れ一枚というノーガードも良い所だからだろう。そして次の日セーフティーカップしてたような気がする。殴ったらめっちゃ固くて涙目になった。



「ねえ神田勲章殴っていい?」

「無理だ死ね」

「なまえそれは駄目ですって!」

「こいつもう冗談の域越えてるからな!自分で殴っときながら手痛い!とか言って泣きやがったんだぞ!?そんな勢いだったらもう飛んでいくっつうの!」

「神田がすごい饒舌になりました、よっぽど痛かったんでしょうね」

「じゃあアレン「やめろ、男の敵」

「やめとけよモヤシなんか下もモヤシくらいしかねえって」

「は?あ、神田も蕎麦みたいな細さと柔らかさなんじゃないですか?」

「お前表出ろ、喧嘩なら何時でも買ってやるよ」

「臨むところですよ」



なんでこう為ったんだろう、やはり男というのは馬鹿な生き物なのだろうか。
不意に火花を散らすふたりの間を強風が吹きさらした。その瞬間ずれるモップスーツ。中はそれこそフィーリングだった私は咄嗟に阻止するも自らの大きさを競うふたりにはしかと見て取れたらしく同時に、



「なに下抑えてるの、見たんだったらお元気な其処殴るよ」

「最悪だ、なんでこんな奴なんかに……!」

「男って不憫な生き物ですよね、全く」

「もいでやろうか」

「ああもっと可愛い子のスカートちらりとかだったら致し方ないと思うんですが」

「なんでこんな奴」

「寧ろもげろ」

「男のものというのは何物にも変えられないくらい大切なモノなんだぜ」

「格好いいこと言ってるように聞こえるけど下はすごい勃ってますからね」

「ちょっと!確実にモップが駄目になってゆく……!か、神田助けて!」


中途半端な手作りの突貫工事みたいなモップスーツなもんで掃除という過酷労働はおろかこんなつむじ風すら耐えられずボロボロと形が崩れてゆく。
神田の元に歩み寄るも彼は目も合わせず抑えたまま後退りした。なんだよ、それ邪魔ならちょん切ってやろうか貴様の六幻でな!



「いやなんで逃げるの」

「これ以上俺の純情を汚さないでくれ」

「誰ですか君は」

「もう良い明日教団中に神田のは粗末なモノだって言い触らす」

「じゃあ僕も、ティムの記録を何処かの飢えたおっさんに売り飛ばしてからそれ手伝います」

「いや待って、ちょっと待って」

「糞兎に売りつけよう」

「いやラビは要らないでしょう」

「お前らには絶望した、全員脱げ」

「なんでですか」

「恥を分かち合おうじゃないか、というかコートくらい掛けてやれよ私泣くぞ?女の子だぞ?」

「だってコート脱いだら、ばれるでしょうが」

「もうバレてるよ!」



もう駄目だと絶望が手を伸ばしてるのを明瞭に見えたとき、あることを思い出した。



「そうだ私、下に水着着てるや」

「…………」

「…………」



そして私は何故か一週間くらい彼らから避けられました。殴ったら二人ともセーフティーカップ装備してて涙目になりました。



おわり。