ショートショート | ナノ



17:42 木村


大学に受かったお祝いに、と木村さんがご飯をご馳走してくれることになった。そこまでは良かった。お祝いは嬉しかったし単純だから舞い上がって喜んでしまった。料理が並べられてそこではっとなって思い出した。もうすぐ木村さんは試合だと、今は大事な減量中だということに。

「い、いまは大切なときなのでは・・・?」
「ああ大丈夫大丈夫」
「試合が終わってからでもよかったんですよ」
「だーめ、俺が祝いたかったの」

でも、でもね。

「独りで食べるなんて楽しくないしおいしくない、です」

そこで木村さんも気がついたようだ。木村さんは私だけ食べれればいいと思っていたようで、そんなの周りから見て見ればおかしな光景なのだ。

「お祝いは今度ゆっくりでいいです」
「なんか・・・ごめん」
「そのかわり今日は泊まっていきます」
「・・・え?」

咄嗟に反応が鈍り遅れてしまった。聞き返す。

「え?泊まりって言った?」
「はい言いました」
「ちなみにどこに・・・」
「木村さんが私の家に」

さらりと言ってのける彼女は果たして分かって言っているのだろうか。

「だって学校は・・・」
「卒業式まで休みです」

泊まりは・・・嫌ですか?そう上目遣いで聞いてくる彼女。嫌じゃない。嫌じゃない、けど。ぎゅっと手を握ると彼女の肩がが小さく揺れる。

「俺、・・・なにもせずにいられる自信ないよ?それでも言う?」
「・・・はい」

お会計を済ませ外にでた。やはり夜はまだ冷え込む。繋いだ手から伝わる体温。春はまだ先だけどなぜか私たちのお互いの体温は熱かった。

きっと彼女(彼)のせいだ。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -