「変わらないね、そういう所」
抑揚なく言った。
それに対してドレークは苦笑した。
「子供を庇ったとか笑える」 「おれが庇わなければその子は死んでいた。仕方ないだろう」
何が仕方ない、だ。
馬鹿か。
庇った所為であんたが死ぬところだったんだ、とサラは言ってやりたかったが当の本人は反省する気が全くないらしい。
こういう人間は死ぬまでこうだ。
馬鹿か。
子供何ぞに。
嗚呼、吐きそうだ。
「馬鹿恐竜」 「何とでも言え」
鼻で笑ってドレークが横になっているベッドを蹴った。
僅かに右胸に血が滲んでいる。
ドレークはわかっていない。
どれ程私達が死と隣り合わせで生きているか。
いやきっとわかっているだろうが、この男は優しいのだ。
サラはもう一度馬鹿か、と言った。
「心配掛けたな」 「いーや、全然」
出る際ドレークはサラの名を呼んだが、サラはそのまま医務室から出た。
こんなに感情を掻き乱されるのはあの男が初めてだった。
もう今度から見舞いなど行ってやるものか。
サラは静かな廊下を一人歩いた。
22 August 2013. Masse
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