田舎に実家があり、幼少期はそこで過ごした。

自分で言うのもあれだけど、私の家は桁違いのお金持ちだった。

お金持ちというのは何事でもお金で解決しようとするので、無駄に皆が堂々としていた。

そして家が無駄に広かった。

誰か死んでもわからないだろうと不気味だったので家は大嫌いだった。

学校も行かせて貰えなくて、全て家で学んだ。

こんな事知ってどうなるんだと思うような事まで学んだ。

でも家にいることを忘れさせてくれる唯一の時間だったから、私はその時間をとても大切にした。

先生にも気に入られたし、沢山世間のことを聞いたりもした。

勉強も必要だが世の中を生きていく知識も必要だと言われたのがきっかけで、私は外の世界を見てみたいと思った。

そういえば一度もなかった。

旅行にも行きたいし、一番行きたかったのが博物館だった。

16歳のとき、都会の大学に行きたいと両親に頼んだ。

内心諦めていたけど、両親はあっさりと許してくれた。

それが今でも不思議で、家の外に一歩でも出たら酷く怒られたのに。

この家は私が思ってたほど窮屈でもなかったらしい。

そう思うようになったのは最近だけれど。

その翌年、私は乗馬の稽古で庭に出ていた。

雨ばかりだったので晴れの日は珍しく思え、愛馬を走らせていた。

ふと庭の砦の向こうを見ると、木陰に人がいるのが見えた。

私は何か用でもあるのだろうか、と馬を引いて近付いた。

その男性は私が近付いてくるのを見てさっと木の幹に隠れた。


「ちょっと、隠れなくても見えてるよ」


よく覚えている。

白いワイシャツはボロボロで茶色く汚れて、茶色いズボンの膝は泥が付いていて、靴は勿論ボロボロの長靴。

農家の人かな、と顔を見れば綺麗な金髪の整った顔をした男性だった。

男性といっても私と年齢が近かった。


「あ、あぁ…ごめん」
「何か用でも?」


透けた青い目がキョロキョロと目を泳がせている。

相変わらず綺麗な金髪は日光で輝いていた。

垢抜けた人だな、と思った。

服はこんなボロボロなのに。


「晴れたときいつも乗馬してるから」
「できるの?」
「ああ、一応。だけど、」


なかなか言いにくいのか一旦自分のボロボロの長靴を見た。

私は気になってだけどなに?と言った。


「き、君の乗り方は癖がある」
「…」


そのとき私の馬がバフッと息を吐いた。

なんだこの人失礼だな。

私と馬が怒ったことに気が付いたのか、その人は慌てて謝ってきた。

実際、それほど怒ってもいなかった。

怒ってないよ、と言えばその人はほっとした様子で鼻をかいた。

これが幼馴染み、ピーター・ギラムとの出会いだった。

ピーターとは18歳の冬以降、会ってない。

多分これからも会うことはないだろう。

18歳の冬、私達は別の道に進むことを決めたから。


21 July 2013.
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