家に帰ってご飯も食べずそのままベッドにダイブすると、ケータイの着信音が鳴った。

取り出して見ると友だちからだった。


「もしもし?」
『あ、サラ?相手見つかった?』
「あーまあね、うん」
『本当?よかったわ。用意してた男共は必要ないね』


ハハハー!と電話越しで高笑いしているので私は苦笑した。

本当に男友だちが多い友人だ。


『で、だれ?』
「それ今聞くかな」
『明日まで待てないもん。同じ学科の人?』
「うん」
『名前は?』
「言ってもわからないでしょ」
『まあね。で?』
「…。エドワード・べレスフォード、だっけ」
『ーーーそれ本当に言ってる?』
「え?うん。どうしたの」
『サラ、首席狙ってたのか』
「ん?…彼、首席なの?」
『知らなかった?有名だよ。いつもシャーロック・ホームズと争ってる。しかもハンサムだし』


ハンサムは兎も角、あのシャーロックと争える人物がいたなんて。

しかもそれがエドワードだって?

でも首席ってことはシャーロックより、


『よかったじゃん!』
「(それっていいことなのか?)」
『じゃあまた明日ねサラ』
「うん、おやすみ」


電話を切ってケータイを置く。

ベッドから這い出て鞄の中身を取り出していると床に小さな紙が落ちた。

拾うとそれはエドワードに渡された紙だった。

明日のこと、なに一つ決めていない。

私は慣れない手付きで電話番号を入力して、電話に出るのを待った。

するとものの数秒で彼は出た。


『はい』
「エドワード?夜遅くにごめんなさい」
『サラ?ああ、僕だ。全然気にしてないよ』
「ありがとう、あの明日のこと決めないとと思って」
『パーティーは18時からだよね。ーーー17時30分はどうかな』
「いいよ」
『じゃあその時間で。中庭の東口で待ってる』
「うん、東口ね」
『ああ』
「じゃあまた」
『…あ、ああ。じゃあ』


おやすみサラ、と電話を切る際に聞こえた。

それに返事をすることなく電話が終わった。

ふと彼を思い浮かべる。

それは完全な彼ではなく、エドワードだった。

彼は彼ではない。

変な緊張が解れ、ケータイとアドレスの書かれた紙をテーブルに置く。

そういえば、シャーロックのアドレス、知らなかった。

知ってるつもりでいたけれど、連絡先になかった。

今度聞いてみようかな。

教えてくれるかわからないけれど。

相手がシャーロックなら、こんな緊張や遠慮、しないのに。


13 October 2013.
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