はっと目を覚ますも今日は休みだった。

外はまだ暗く、座って寝たからか首が怠い。

休みなんだから横になって寝よう、と仰向けになった時、足に障害物が当たった。

私、ソファーに物置いてたっけ?と暗いので部屋の電気をつけた。


「……なんで?」


そこには座って爆睡している保安官がいた。

ということは二人並んで座って寝てたのか。

…気味悪っ。

しかも部屋のシャワーを借りたのかバスローブ一枚。

髪の毛は乱れているし肌は真っ白だし、女かこいつは。

あぁ、そうだった、今日はこいつに付き合わなければいけないんだった。

なんであんな約束したんだろう、と手に持っていたラフィットの上着を掛けてやった。

そしてそのままシャワー室に足を動かした。


「サラ?」


微かに私の名前が呼ばれるのが聞こえた。

私は慌ててコックを捻る。


「ちょちょちょ、開けんな!」


自然に開けようとするな!

それでも尚ドアを開けようとするので、私は高速でバスローブを着てシャワー室を出た。


「…(なにもしてないみたいな顔しやがって)」
「早くここから出たいんです」
「知らん!」


もう着替えを済ませていた(いつもの背広だが)ラフィットを出て行かせるべく、私とラフィットは一時間後に海軍本部の正門のところで待ち合わせをした。

今日に限って天気がいい。

腹立ってくるな、と思いながら廊下を歩く。

すると前から人が歩いて来るのが見えた。


「あ、ドレーク」
「ああ。今から出掛けるのか」
「うん、もう騒ぎを起こさないようにするわ」
「一緒にいた男は保安官か?」
「そう」
「なら安心だな」
「は?」
「いや、何でもない」


じゃあな、楽しんでこい。

なにが言いたかったんだ、と思いながらもドレークと別れた。

正門に着くともうラフィットがいた。


「なんでステッキ持ってるのかな…」
「念の為です」


それがあるから毎回なにか起こるんだよ。

さ、行きましょうか、とラフィットはスタスタ歩き始めた。

はぁ、とため息を吐き、早足でついて行った。

思えば休日に出掛けるなど今までなかった。

医者になりたての頃は保安部に引きこもって外に出なかったけれど、いつも誘ってくれるのはラフィットだけだった。

ラフィットはただの暇潰しかも知れないけれど、私は楽しんでいたのかも知れない。


「お腹空いたので食事しましょう」


…食べることしか考えていないんじゃないのかこいつ。

大人しくついて行くと、クラシックな料理店に着いた。

まさかここで騒ぎを起こさないよね?

人は少なかったけど、こいつは建物も破壊する。

保安部のある島の店は殆ど破壊済みなのだ。

心の中で悲鳴をあげていると腕を引っ張られ中に引きずり込まれた。


「何にします?」
「…適当に」


無駄に眺めがいい席に案内され落ち着かないのにそんなことを聞かれた。


「じゃあ、これとこれとこれと…」
「頼みすぎ」


テーブルいっぱいに置かれた料理に次々手を伸ばすラフィットを半分感心の目で見る。

全部食べた後はコーヒーを啜りながらいつも話すようなことを話した。

この距離は小さい頃からずっと変わらない。

ラフィットだけにしか話せないことなんて沢山ある。

ラフィットもそれを聞いてくれる。


「出ましょうか」


昼過ぎにその店を出て、私とラフィットはショッピングモールに行った。

私は服やブランドには関心がないので、買う時はラフィットと相談したり試着したりした。


「これとこれ、どっちがいい?」
「こっちですかね」


一通り見て回った後、私とラフィットは映画を観た。

映画を観るのはこれが初めてだったので、暗くて音も大きくて凄く怖かった。

終始びびっている私を見てラフィットはずっと隣で笑っていた。


「笑うな!」
「ただの映像じゃないですか」


ラフィットの頬を思いっきりつねってやった。

人を馬鹿にしやがって!


「いひゃい、です」
「ふん!もう観ないから!」


逃げるようにショッピングモールを出たらもう辺りは暗くなっていた。

気が付けば私は手ぶらで、ラフィットの両手には沢山の紙袋。

…それ全部私のだ。


「持つよ」
「いいです、こんな荷物持たせられません」
「あ、ありがとう」
「いえいえ」


なんだか急に恥ずかしくなって、顔が紅いのをばれないようにラフィットの少し前を歩く。

今日は騒ぎを起こさなかったな。

なんか、いつものラフィットじゃないみたいだ。


「この荷物、保安部のサラの私室に置きましょうか?」


海軍本部の正門に着くと、ラフィットはそう言った。

確かに後少しで帰るんだ。


「いいよ、自分で持って帰る」
「部屋を荒らしたりしませんよ」
「荒らしたら殺す」
「では持って帰りますね」
「…うん、ありがとう」
「保安部に帰る時、迎えに来ます」


何故か断れなかった。

逆に嬉しがっている自分がいて、別れも言わずに咄嗟に門をくぐった。

恥ずかしくて振り返れない。

大丈夫、この戸惑いもすぐに消えてくれる。


5 August 2013.
Masse


ショッピングモールなんてあるのか(笑).
学生みたいに騒いでいたら可愛いな.


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