いつもより少し早く起きる。
今日から一ヶ月間、海軍本部へ出張だ。
これが初めてじゃないので、大体の服やらはそっちに置いてある。
私は最低限の荷物を整え、部屋の整理をし始めた。
私がいない間は同僚が使う。
そしたら手術室の自動ドアの開く音がした。
「今から出張ですか」 「うん。なにか用?」 「いえ」
じゃあ来るな、と思いながら鞄を持つ。
いつもこの日は姿を現さないのに…なにかあるな。
「…昨日の怪我があるとか?」 「ハハハ」 「なによ」 「今日の任務は気が向かないので代わってもらいました」 「…は?」
まさか、と頭で思うも既に手遅れで、私はまた窓から飛び出る羽目になった。
この展開に良い加減慣れたのか、悲鳴は出なくなった。
冷静な頭で、こいつ海軍本部まで送るつもりだ、と。
なにかある、と感じた時点でさっさと行けば良かった…!
もうこんな状態だからそう思っても仕方がないけれど。
「ちょっと!!」 「何ですか?」 「落ちたらどうすんの!?」 「私がそんなヘマをするとでも?」 「良い加減な…!」 「大丈夫です、保安部の船より速いので」 「そんなこと聞いてない!!」
なんて奴だ、やっぱり悪魔だ、しかもなんで私がしがみ付くような形なんだ?
こんなの腕の限界が来たら海に落ちるじゃないか!
しかし不幸中の幸いか、私はラフィットの背中に全体重をかけている状態なので海に落ちるということはない、だろ、う、多分。
死ぬもの狂いでラフィットを見てみると案の定余裕な顔で。
…もう、どうにでもなれ。
***
「見えましたよ海軍本部」 「あー、うん」 「予定より早いですね。少し街を探索しましょうか」 「あー!聞こえない!!」
確かに保安部の船より速いんだなぁ、と考えた頭を左右に振った。
なに感心してるんだ、普段みたいに船で行った方が時間通りだったのに!
これまさか海兵に狙撃されるんじゃ…。
私の悲鳴が海軍本部の空に響いた。
「狙撃されませんでしたね」 「…」 「海にばっかり警戒していては、」
ドゴッと鞄でラフィットの頭を叩いた。
「馬鹿か!もう帰れ!!二度と現れんな!!」
訓練場にいた海兵が一斉にこっちを向いた。
もう、帰りたい。
4 August 2013. Masse
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