忘れもしない、あれは高一の夏だった。

期末考査一週間前を切り、職員室や教室は生徒で賑わっている。

僕はそんな中ひとり図書館で勉強をしていた。

図書館に人気は少なく、他とは違って静寂で好きな場所の一つだ。


「霖ー!お待たせー」


聞き慣れない声。

毎日の様に図書館に通っている自分は大体いつも図書館に来る生徒の顔を覚えている。

見覚えはない。

だから試験勉強をしに来たんだろう。

その生徒は飲食禁止なのにも関わらず手に飲み物を持ち、片手にはノートやらを持っていた。


「遅いよ」
「ごめんごめん、先生に捕まってさ」


連れがいるらしく、さり気なく見てみると肩までの黒髪の生徒だった。

ずっと待っていたらしく、でも怒ることなくノートを開いた。

その時は整った顔立ちの人だ、と思った。

見入っていたらしく、その生徒と一瞬目が合った。

少し驚いて目が合ったままになっているとその生徒から外れた。

本当に一瞬の事だった。

だから相手は気にもとめない。

その生徒の名前も学年もわからないまま、期末考査が終わり、夏休みに入った。

初恋だった。


23 September 2013.
Masse


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