「霖!おはよう」
「おはよう」


朝。

瞳は教室に入って来ると、そう言って前の席の椅子に座った。

昨日良い事でもあったのか今日は頗る上機嫌に見える。


「霖、良かったねえ」


今度は歯を見せて笑って、隣で本を読んでいる中禅寺くんを目で合図し、次に黒板の日直の方にも合図した。


「…ああ、」
「何その返事。まあ私がフォロー入れるから」


にしし、と今度は本当に耐えられなくなったのか笑い出した。

いつの間にか私が中禅寺くんの事を好きな設定になっている。

隣で静かに本を読んでいる人がいるのに目の前の親友は御構いなしだ。

私は半ば慌てて瞳の笑いを抑えるのに必死だった。


***


「鳴神さん」


次は移動教室だった。

みんなぞろぞろと教室から出て行く中、私は後ろのドアの鍵を閉めていた。

すると中禅寺くんが私を呼んだので
私は思わず身構えてしまって、返事が出来なかった。


「開ける時は僕がするから」


そう私に言って、みんなが完全に出て行くまで廊下の隅で待っていた。

何も言えないまま、私は前のドアの鍵を閉めた。

すると中禅寺くんが近づいて来る。


「鍵は僕が持っておくよ」


ああ、その方が良いね、なんて心で思いながら鍵を手渡した。

何と言うか、予想通りの人、と言うのか。

鍵を持つと中禅寺くんはスタスタ早い足取りで歩いて行った。

その後瞳が来たから一緒に教室に向かった。

あの場を見られていたら、からかわれていただろうな、と瞳を見て思った。


***


授業が終わり、日直の最後の仕事が残っていた。

取り掛かろうと思った時、瞳に呼ばれて無理矢理教室から引き摺り出された。

仕事あるのに、と言ったけど瞳はまるで聞く耳を持っておらず、そのまま連行された。

連行された先はなんと生徒会。

しかも中から顔を覗かせたのは榎木津先輩だった。


「やあ、君が鳴神って子か」


あの仏頂面が言ってた子はこの子だったんだな、と初対面にも関わらずぶつぶつ独り言を言い出した。

何の事だかわからないまま、私はその場で榎木津先輩と瞳と話す羽目になった。

でも少しだけ話をしたら榎木津先輩は何処かへ行ってしまい、瞳ともそこで別れた。

何か確認しただけだったのか。

そしてすっかり私は日直の仕事を忘れていたので慌てて教室に駆け込んだ。

でも時既に遅く、黒板は綺麗にされ、日付も日直も書き直されていた。

あの短時間で、と呑気に思っていると中禅寺くんが丁度帰る支度を整えているところだった。


「中禅寺くん」


支度をしていた手が止まった。

そして振り返り私を見ると今度は身体ごと私の方に向いた。

相変わらずの無表情(初めて見た時からずっと無表情)だからちょっと強張ったのを感じる。


「あの、ごめんね。私生徒会室行っててーー」
「その事なら良いよ。呼んだ人と僕は知り合いで前々から言われていたから」


じゃあ、と鞄を持ち中禅寺くんは早々と教室を出て行った。

知り合いってどう言う事だろう。

でも何だか不機嫌そうな顔だったな、中禅寺くん。


23 September 2013.
Masse


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