祝日の午後。
仕事が休みなのを良い事に街は人でいっぱいだ。
大学も休みなのだろう、教師をしているサラは僕の向かいで本を読んでいる。
本に集中しているのを良い事に僕はサラをじっと見る。
外見から大抵の推測は出来るが、その人間の心まではわからない。
それが僕にとってとても不便だ。
不便と思ったのはここ最近だが。
ーーサラの心は全くもってわからない。
他人なんてどうでもいいし、わかりたくもないが、サラは違う。
この感情にはとっくに気が付いているが、今まで経験した事がない。
なんて僕は無知なのだろう。
すると、サラのケータイの着信音が鳴った。
その途端僕はサラから目を離すが、思いがけない言葉が聞こえた。
ーー今から会えるかな?
なんて運が悪い。
地獄耳を初めて呪った。
男の声だ。
一気に不安に煽られる気持ちを必死で隠す。
「今から?時間かかるけど、」
ーー良いんだ。じゃあ待ってるよ
なんだって?サラは行くのか?
サラは読んでいた本を机に置き、ケータイをポケットに仕舞って鞄の中に財布などを入れ始めた。
僕はそれを黙って見続ける。
ジョンだったら、なんて言って止めるのだろうか。
考えたが僕には見当もつかず、唯手を握り締めるだけだった。
「じゃあちょっと出かけてくる」
「…早く帰って来い」
ちょっと?良い加減な言葉だ。
どうせ夜まで帰って来ないんだろう。
そう思って僕は言ったが、サラははいはいと僕に適当に返事をした。
何故、君は気付かない。
僕はこんなにも君を想っているのに、と静かに思った。
11 February 2013.
Masse