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積もっていた雪も溶け始め、やっと長い冬が過ぎたのだと実感する。

日本で言えば、春が来る。

小さい頃は四季など関係なかったけれど、歳をとれば冬は応えるものだ。

今日はいつもより早く起きて、家の隅から隅まで掃除し、庭の手入れをして、料理もつくった。

我が家に来客が来るのだ。

来客といってもいつもホグワーツで会っているけれど、珍しく彼から日本に行ってみたいと言い出した為、私は気合いを入れている。

日本はロンドンとは違い、今日も快晴だ。


「いらっしゃい、セブルス」


約束の時間通りに家の扉を叩いたのはホグワーツで魔法薬学の教授をしている親友のセブルス。

いつもと雰囲気が違うなと思っていたら、あの黒いローブを羽織っていなかった。

でも相変わらず今日も黒だったけれど、見るからに新しいスーツだった。

今日の為に用意したのかな、なんて思ったり。


「似合ってるね、スーツ」
「マグルに散々見られたがな」
「そりゃ真っ黒のスーツ着た外国人いたら見るでしょうよ」


イマイチ訳のわかってないセブルスが着ている上着を脱がせ椅子に掛ける。

そしてセブルスを席に座らせたら丁度ミートパイが出来上がる音がした。


「魔法で焼けるだろう」
「あぁこの電子レンジ?他にも色々出来るから便利なのよ」


セブルスはマグルのことになると興味なさげに不機嫌になるけれど、マグルが使っている機械とかには興味あるみたいで、セブルスの誕生日に説教覚悟でティッシュを5箱くらいあげたらその日から使っていた。(もうしっかりカメラにおさめたね)


「セブルスってお茶飲めるの?」
「ああ」
「お寿司頼んじゃったんだけど」
「食べる」
「(なんか段々日本人らしくなって来てる?)じゃあお皿用意するね」


彼のことを思って洋食もつくったんだけれど、必要なかったみたいだ。

全ての支度が済んで、私が席に座るとセブルスが横に置いていた鞄に手を突っ込んだ。


「礼だ。ここに来たいと言い出したのは私だからな」
「え、そんなの良いのに」


綺麗な紙に包まれた物は何かわからなかったけれど、もう一つ渡された物は私が前から読みたかった本だった。

彼のこういう気の効くところが好きだ、昔から。

彼は変わっていない、少しも。

私はどうだろうか。


「久しぶりに料理したから不味いかも」
「そんなことない」
「そっか、安心したわ」


ここは魔法界と違って静かだ。

この世界に住んでいる人達は魔法の存在を知らず、この世界にあるもの全てが人の手で作られている。

なんて深い、いい世界なのだろう。

今からでも魔法を捨てて、のんびりこの世界に住むのも悪くない。


「いいところでしょ?」
「ああ、君が産まれた国だからな」
「それ、関係あるの?」


ふ、と彼は笑った。

私は彼の笑った表情も好きだ、昔から。

でもやっぱり私は産まれた故郷よりも、七年間彼と過ごしたホグワーツを選ぶ。

長いようで短かった青春時代に戻れる気がするからだ。

故郷は、たまに帰って来るからこそ良いのかも知れない。


「次の休暇も、ここに来て良いか」
「もちろん。次来る時はここに泊まって、どこか出かけましょ」
「ああ」


また、明日から学校が始まる。

青春はもう過ぎ去ったけれど、私にはあなたがいるわ。


27 January 2013.
Masse

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