*教師×教師
「いい天気ね」
もうすぐ新学期が始まろうとしている。
夏は好きではない。
あのじめじめした気候、何とも言えない。
だからこの涼しい日が恋しい。
こんな日には箒にでも乗り、この瑞々しい空気を満喫したい。
そう思いホグワーツを出た時だ。
丁度解剖学のバラデュール先輩が彼方から歩いて来た。
彼女は僕の姿を見るなりそう言った。
「そうですね」
見ると片手には少量の草。
「どこに行かれていたんですか?」
あぁ、これね、と言うように持っていた草を僕に見せた。
「セブルスに頼まれてね、中々見つけるの手強かったのよ」
バラデュール先輩は僕の一つ歳上で学生時代から仲良くして貰っていた。
でも一番彼女と仲が良かったのはセブルス先輩だ。
今でもバラデュール先輩はセブルス先輩の手伝いをしたり、一緒に話しているところを見かける。
「貴方は?どこかへ?」
「はい、少し散歩に」
彼女はそう、微笑んで髪を耳に掛けた。
この仕草も昔から知っている。
「飛行は苦手だわ」
「知っていますよ」
そう言うと失礼ね、とまるでセブルス先輩といる時のように笑う。
その瞬間、僕は欠落感に襲われた。
「また機会があれば」
連れて行ってね。
そう彼女の瞳は言い、僕の横を通り過ぎた。
嗚呼、そうか、あなただ。
僕の心がこんなにもすっぽりと穴が空いているのは。
彼女の人生の時間を僕に費やしたい。
そう思って何年が経った。
けれどこれからも知らぬふりをするのだ僕は。
酷く、遣る瀬ない思いだった。
17 January 2013.
Masse