こんな日もあるのか。
身体は疲れているのにベッドに横たわっても眠れない。
欠伸1つも出ない。
眠れないのには心当たりがある。
今日、ある女性に想いを告げたから。
告白なんてとんでもないとばかり思っていて、今までその女性に片想いしてきた。
でもそれが今となってはその女性の恋人に俺がなった。
告白の場面を思い出すだけで恥ずかしくなる。
出てくるのは溜め息。
もう眠りについているんだろうか、今日のことをどう思っているんだろうか。
考えるのはサラのことだけ。
何度目かわからない溜め息をついた時、デスクのでんでん虫が鳴った。
突然の大きい音に驚いたが直様でんでん虫に手を伸ばした。
そしてはい、と返事をする。
「…ドレーク?」
ぼーっとしていた頭が起きる。
同時に心臓の鼓動が早くなり、足や手に血液が流れ、ゆっくり手を握った。
聞きたかったんだ、君の声が。
「あぁ、どうしたんだ?」
「…もしかして起こした?」
え、あ、いや、起きていた。
そう言えばほんとに?と笑い声と返って来た。
「聞きたいことがあって。
大したことじゃないんだけど、」
「あぁ、何だ?」
一気に期待する。
良いムードだ、集中しろドレーク。
「…明日の会議って9時からよね?」
「…」
な、何だそんなことかと如何にも期待してなかった風に言えば、心配だったからと。
これがサラかと思いながら次の言葉を必死で探す。
まだ電話を切られたくない。
少しでも君といたいんだ。
「こんな時間にごめんね、じゃあ、」
「っサラ待ってくれ、」
「んー?」
明日の朝一緒に食堂へ行かないか。
出て来たのはこんな恥ずかしい言葉。
そして自分が傷付かない様に防衛線を築く。
「別に嫌だったら、あの、良いんだ、別に、」
もっとかっこよく誘えないのか。
座っている椅子で移動したり手でデスクを叩いたり。
「良いよ」
「…!」
「はは、寝坊したらごめん」
ほっと胸を撫で下ろし、夢じゃないよなと頬を軽くつねった。
「じゃあ朝迎えに行こう」
「うん、ありがとう。
おやすみドレーク」
おやすみ、と俺は遠慮がちに受話器を置いた。
…また眠れなくなるな。
22 May 2012.
Masse