長い任務に出ていたドレークが帰って来ると本人から連絡があったのは昨日。
明日には帰れると言われ今日がその帰ってくる日、だったのに。
昼を過ぎても、夜に暮れてもドレーク率いる軍艦が見当たらない。
正義の門が開く音も一向に聞こえない。
聞こえるのは夜の波の音だけ。
ドレークになにかあったのではないか。
そう思えば最後、私はドレークのでんでん虫に何度もかけた。
だがでんでん虫が繋がらない。
何度も何度もかけたのに、ドレークは出ない。
今日帰ると言ったのは誰だ。
でももしかして任務が長引いたのかも知れない、と自分で自分を慰める。
ドレークのことだ、またひょっこり明日の朝にでも現れるだろう。
なんで私がこんなことで思い悩まなければならないんだ。
そう思いながら無理矢理ベッドで眠った。
朝の6時過ぎ。
寝付けが悪かったのでさっさと身支度して窓から船着場を見た。
すると船着場にあったのはドレーク率いる軍艦が3隻。
やっと、やっと帰って来た…!
私は部屋を飛び出し、遠い船着場まで無我夢中で走った。
軍艦の近くには白衣を来た人が10人程、他沢山人がいて、私はやっぱりなにかあったんだと。
息切れしているのも気にせず、医者と人を掻き分けて前へ進んだ。
すると軍艦の中から次々運ばれて来るのは海兵の死体と大怪我を負った海兵。
よく見ると船は今にも沈みそうなボロボロの船で。
私は頭が真っ白になってドレーク、ドレークと声を張り上げながら探し回った。
船着場は今では怪我人で溢れていて、医者がその治療に当たっていた。
死体場には絶対いないでと祈りながら1人1人顔を見る。
でも、ドレークはいなかった。
まさか、と地面に膝をついた時、1人の医者に声をかけられた。
バラデュールさん、と。
「あなたがバラデュールさん?」
「そうですけど、あの」
「良かった、やっと見つけた」
ドレークは重傷を受けたらしい。
命に別状はないと言われたが、今は手術をしていると。
手術室に運ぶ時、とにかくサラに会わせてくれと何度も叫んでいたらしい。
死ぬ前にもう1度だけサラに会いたいと。
でも流石に命の方が大事なので、とその医者は言った。
それを聞いた私は、1人、手術室の前で静かに泣いた。
無事手術が終わったのは昼前。
麻酔が切れるまで後30分程度と言われた時は本当に、生きていて良かったと。
明るい日差しに照らされた部屋にドレークは横たわっていた。
「ドレーク、」
温もりのある大きな手を両手で握る。
長い睫毛が開かれるまで後数秒。
9 May 2012.
Masse