「?」
いつもの様に軍医室で怪我人が運ばれて来ないか待っていると、小さな石がコンッと窓に当たった。
風かと思ったけど、また2つ目の石が窓に当たった。
私は開けて欲しいのかな、誰だろうと普段開けない窓を開ける。
「え、…わっ!」
グレーのフードを被った男の人がいきなり窓の淵に乗ったと思ったら、今度はこっちに飛んで来て私はその男の人の下敷きになった。
私は何の冗談ですかと。
そしたらその男の人は何故女がここに、とぶつぶつ独り言を言いながら私の上から退く。
「あぁ、すまないな。
てっきりここはテオドールの部屋かと思ったが」
「テオドール?」
テオドールって、将校のヴィスカルディさんの名前。
この人はヴィスカルディさんの知り合いなのだろうか。
でも何故窓から、知り合いなら門から入って来れば良いのに。
フードを深く被っていて良く表情が読み取れない。
「どうやら違った様だ」
「ここは軍医室で、ヴィスカルディさんの部屋は2階に」
「そうか、邪魔をしたな」
「い、いえ」
出て行こうと部屋のドアノブに手を掛けたその人は、私にまた振り返った。
「名前は」
「私の、ですか?」
「俺はルポだ」
「シルヴィア・バルデッリです」
ふーん、と言いながら出て行ったそのルポと言う人の話をその次の日ヴィスカルディさんに話したら。
「例え石が窓に当たったとしても開けろと言われても絶対に、絶対に開けるな」
鋭い目でそう言われ、軍医室の窓は釘で固定され開けられなくなりました。
そんなにルポって言う人は悪い人ではなさそうなのに。
(いや、窓の向こうに美しい女性がいたものだから仕方なく)
(二度と近付くな)
16 Mars 2012.
Masse