short | ナノ
海軍には海賊嫌いが大半。

自分もそうかと聞かれれば素直にそうだと言えない。

俺は後少しでここ、海軍を出る。

何の為にでもなく、このコートを脱ぐ。


「サラ」


同じ階級の恋人。

名前を呼んだ恋人は、俺に釣り合わず美しいひとだ。

でももう少ししたら、サラとも会わない。

いや、会えない。


「おはよう」

「おはよう、ドレーク」


そうか、まだ朝だったか。

この朝があと何回か来れば、もう会えない。


「朝食は?」

「先に食べてしまった」


そう、じゃあまた、と少し淋し気に俺に背を向けて歩いて行く恋人の後ろ姿を見て。

俺は一体サラに何をしたか。

恋人らしいことをしたか。

記憶にあるのは、ふと微笑んだ恋人の表情だけ。

馬鹿笑いも、笑い話もしない恋人だった。

でもそんな恋人が、今では愛しい。

愛しくて、何故、こんな愛しいひとを置いて行かなければならないのか。

小さな背中をも追えないこの男を、どうか許してくれ。

君を連れて行く訳にはいかない。

海に出ることが、美しい君の為かも知れないと。


5 March 2012.
Masse

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