short | ナノ
Person Of Interest : JR/HF


とん、と左肩に重みを感じたと思ったらそれはフィンチだった。ゆっくりとしたフィンチの息遣いが首に当たる。大した重さではないのに何故か血液が逆流するような感覚に陥った。
今回の対象者は随分と引きこもりなようで、何かあってからでは遅いと俺とフィンチは対象者の向かいの部屋を借り、窓から対象者を観察することにした。スタンドの電気をつけ必死にPCに向かっている対象者を窓越しに見つめること二日。二日間何もしなかったことの疲労感とオレンジ色の蛍光灯の光に眠気を誘われたのか窓に映っているフィンチは眠ってしまっている。
(…安心しきった表情だな)
良いのか、あんたが今凭れているのは元CIAの殺ししか能のない男だぞ。まだ好きな色も教えてくれないのにこんな無防備な姿は初めて見た。余程疲れているんだろうな。俺とフィンチの体力はまるで比べ物にならない。どこを取って見ても俺とフィンチの共通点なんてない。良くここまで付き合っていられると自分でも思う。だがお互い死んでいる人間だからどこかしら仲間意識はある。そしてフィンチは恩人だ。仕事もくれた。フィンチに初めてあの店で礼を言った時、自分に誓った。俺はあんたの足になろう。危険なことは全て俺が受けると。
今まで沢山人を殺して来たがフィンチを見ているとそんな過去も全て浄化してくれるような気がする。だから俺はあんたに甘えているんだ。今までもこれからも、俺は殺人を繰り返すだろうが、俺はあんたと一緒じゃなきゃ仕事はしない。死ぬ覚悟は昔から出来ている。だがあんたを置いて死にはしない。これだけは覚えていてくれ。
冷え切った指先を息で温めフィンチの頬にそっと添える。今までひとりだったんだ、もう安心して良い。今は俺がいるよ。
お願いだ、夜が明けるまで待ってくれ。夜が明けるまでこうしていたい。


13 April 2014.
Masse

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