*stop the world I wanna get off with youの続きっぽいもの.
君はきっと奥の手を隠している。
わかるさ、俺は今君を取り囲んでいる奴らとは違うから。
でもそれを証明出来ない。
奴らとは違うってことを、君にわかって欲しい。
でもそれは言葉に出来なくて、ずっと喉が詰まっている状態だ。
ほぼ毎晩、君のことを夢に見ていたよ。
でもどの夢も俺にとって決していいものではなかった。
不安なんだ、こんなにも。
俺と君の間にあるこの流れをいつまでも変えることが出来ないかも知れない 。
そう思うといても立ってもいられなくて、俺は何処か誤魔化すように酒を注ぎに静かに席を立った。
酒が不味い。
煙草の匂いも今は好きになれない。
少しふらふらした足取りでカウンターに行き、瓶を取ってグラスに注ぐ。
注いでいるグラスにサラの姿が映った。
いい加減諦めろ、お前らがサラを落とせる筈ないんだ。
半分痺れている指でグラスを持ち、それを一気に流し込む。
もうあの言葉が出ないのなら喉も何もかも壊れてしまえ。
そして他の誰かを好きになろう。
俺なら簡単に落とせるだろうから。
そう自分で思って笑いながらグラスを乱暴にテーブルに置いた。
「飲みすぎるとよくないわ」
ああ、やっぱり君のことが忘れられない。
「そんな飲んでいないよ」
「嘘、ちゃんと歩けていないもの」
だから他の誰かを好きにはなれない。
もうそれは嫌になるほど考えた。
そうやって君は虜にするんだ、捕まえて離してはくれない。
要らないものを一切纏っていない所が俺は好きで、そして怖い。
「なにか、あったの?」
ーー何故そんなことを聞くんだ?
グラスを見つめていたのを止め、サラを見た。
彼女の整った顔は酷く真剣で、切なくも見える。
(本当に、)
もしかして、
(知りたいのか?)
君は俺のことを想っている、のか?
「…別に、何もない」
君に想いを告げて君と結ばれることが唯一の俺の願いだった。
けれど今はそれ以上に、君と離れることを怖がっている。
始まりがあれば終わりもある。
怖いんだ、君に捨てられるのが。
君の要らないものになる日が来ると考えたら、初めから君の傍にいない方がいい。
君と別れるのは辛いんだ。
「…そう」
「…」
君の心に俺の入る余地はあったのか。
でもそれには限りがある。
辛いんだ、君と一緒にいる時もいない時も、兎に角辛い。
君にはこんな不安があるのかないのかわからない。
「待ってくれ、」
でもわかったよ。
君が今去って行こうとした時にわかった。
俺が掴んだサラの腕の温度からも。
君の瞳を見るとその不安が消えて行くようなんだ。
完全ではないけれど、臆病な自分を忘れることが出来る。
泣きそうな顔をしないでくれ。
落ち着いて、キスを待つ仕草をしてくれ。
そしたら俺は君にキスをして、ずっと君の傍にいるから。
「あそこに戻る必要はない。ここにいろ」
夢にまで見た関係が現実になりつつある。
これが全て夢じゃないように、夢にならないように。
君のその静かな想いを感じながら、俺は酔いを覚ますように息を吐く。
あの時言っていたら間に合ったのに、と思わないように。
If This Feeling Flows Both Ways
24 January 2014.
Masse
大胆に見えて慎重な男ギラム.
ご期待に応えれたかどうか不安です…
kippo様、リクエストありがとうございました! :)