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すっかり冷えた部屋の暖炉に火をつける。

夜風でガタガタ音を立てる窓にカーテンを閉め、冷え切った身体を暖炉の前で温めることなく、なにもない淋しいベッドに潜り込む。

パチパチと薪が燃えるのを見ながら、ぎゅっと護身用の銃を握り締めた。

これはヘイザムさんと出会って少し経ったときに貰った物。

万が一のことの為にと言って。

冬の夜が私にとって一番怖い。

早く明けて欲しいと思っても、忌々しく輝く月は嘲笑うばかり。

だからカーテンをきっちり閉め、毛布と身体の冷たさを追い払うように火をつけ、この銃を握って眠る。

ヘイザムさんがいない夜はこれをお守りにする。

火の温かさが感じられた頃、部屋の扉が開く音がした。

いつもは気がつかないのに、今日は何故か目が冴えていてわかった。

嬉しさが勝って振り向いてお帰りなさい、と言いたいのに、ずっと私は銃を握り締めて肩を震わせていた。

一体自分はなにに怯えているのだろう。

ヘイザムさんが上着やらを脱ぐ音が聞こえ、私は目を閉じた。

ベッドに入って来て、背中を向けている私をヘイザムさんは後ろから抱き締めるように横になった。

彼から血の匂いがする。

最初はこの匂いに慣れなかったけれど、今では心地よいとまで思える。

暖炉では温められなかった私の身体が、ヘイザムさんの体温によってじわじわと温められていく。

銃を握っている手にヘイザムさんの大きな手が重ねられた。

私は思わず息を呑む。

ヘイザムさんは私の手から銃を抜き取って、隣のテーブルに静かに置いた。

なにもなくなった私の手にまたヘイザムさんの手が重ねられる。

私はそっとその手を握り返した。

今はあなたがいるから、それは必要ない。

あなたが私を守ってくれるから。


「おやすみ」


その声はいつも酷く私を安心させる。

いつのまにか火は消えていて、私はぼやけた頭で、起きたときも彼がいますように、と願った。

この先もずっと私の手を取ってくれる?


30 October 2013.
Masse

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