溜め息と一緒に出た白い煙が視界を奪う。
煙草を吸っているのに全く頭がすっきりしないのは何故だ。
背中から伝わって来る壁の冷たい温度が心臓にも伝わり、さっきまで熱を持っていた身体は急に冷えた。
無造作に投げ出された足の周りには吸殻やら煙草の箱やらが散らばっている。
散らかった部屋。
こんなの、有り得なかったのにな。
そしてまた煙草に火を付ける。
ーーーああ、留守電を変えなければいけない。
だって俺はもう独りなんだから。
「私たちは電話にでることができません」は可笑しいよ。
君は出て行ったんだから。
でもそれだけしか君の声を聞く方法がなくて、消せないんだ。
馬鹿げてるな、俺。
もう何ヶ月も経つのに乗り越えられないでいる。
こんな事、初めてだよ。
情けない。
俺はもっと強いはずなのに。
君が俺の隣にいたからかな。
でも君はいないんだ。
もう、いい。
君を想って落ち込むのはもういい。
疲れたんだ。
君も俺も。
---♪ and I wonder if I ever cross your mind
カレンダーを変えなければいけない。
7月15日で止まったままだ。
その日以来、君はいない。
その日で俺の時間は止まったままなんだ。
記念日だってない。
あの日に戻れたなら、俺は子供染みた意地を張らず君に謝って、抱き締めて、キスをしたい。
こんな、君がいなくなるなんて思ってもいなかったんだ。
幸せだったから。
君が俺の全てだったから。
でも今は何も残っていない。
今の俺を見たら君は何て言うかな。
もう一度君に会えたのなら、俺は君に愛してるよと言いたい。
ああ、君への想いにつぶされそうだ。
君との思い出が恋しい。
なんて馬鹿げたラブソングだ。
ラブソングはもういい。
言っただろ、ラブソングはもういい。
泣くのも疲れたんだ。
君がここにいたら、と思うのも。
だからラブソングはもういい。
悲しくて、時の流れがつらいんだ。
でも何故ラジオを消せない?
---♪ for me it happens all the time
嗚呼、君の笑った顔が見える。
俺はラジオを聴きながらそっと瞳を閉じた。
15 October 2013.
Masse
From. Ne-Yo - So Sick
ラジオの曲からはLady Antebellum - Need You Now