short | ナノ
*長編ヒロイン


こんな状況、いつものことか、と船長らを見て思う。

小さな島に辿り着いて、島で名の知れたレストランにいる。

なに食べようかと考えていたらいきなり他の海賊に手を出したみたいで、船長らはレストランの中で喧嘩中。

ほんと、たまには静かに食事したいんだよね。

部外者気取りで遠く離れた席に座り、喧嘩を見て慌てている店員に次々と頼んだ。

見渡せばレストランの中は一般客がいなくて、もう、帰っちゃったんだよ。

だからもう止めたら、と言っても止まらない人達だから止めた。

店員が食事とお酒を持って来て、私はそれに向き合う。


「そんなに腹が減っていたんですか」


嫌々顔を上げると額から血を流しているラフィットがいた。

あんな短時間で血って流れるものなんだろうか。

すると私の前にドガっと座り、近くにいた店員にウィスキーを、と。


「もっと戦って来たら?」

「まさか」


すっと白い手が伸びて来たと思ったら私の食べる筈だった肉料理の皿を自分のところへ。

こんな行動、保安官時代にされてたら平手打ちしていただろうけど、今となってはこれが普通、もう慣れた。

目の前のマナーを知らない男は運ばれて来たウィスキーに手を伸ばした。


「お酒、飲めるの?」

「飲めますよ、普段飲まないだけで」

「ふーん」


船長とお酒ならいつも見てるから自然だけど、ラフィットとお酒ってなんか違和感が。

ウィスキーなんて飲んだらぶっ倒れるんじゃないのか、とも思った。


「サラは?」

「ん?」

「酒ですよ」


グラスに注いだウィスキーを私の前に置く。


「昔ウィスキー飲んでぶっ倒れたんだよね。
だから無理」


そう言って笑いながらラフィットの手の届く位置に置いた。

女がそこまで強かったら嫌でしょ、と。


「まぁ、そうですね」


可笑しく笑った彼を見て、大分私に笑った顔を見せてくれる様になったと思う。

あんなに人が嫌いで、笑った顔なんて見たことなかったのに。

やっぱり、嬉しいんだな私は。

ウィスキーをグラスに注ぐ彼の額にハンカチで血を拭き取りながら静かに微笑んだ。


26 May 2012.
Masse


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