short | ナノ
*長編ヒロイン


正午の鐘が街に響く。

私は1人その鐘を聞きながら街をぶらぶら散歩していた。

薬草や包帯などなくなった物は全て買ったし、特にすることはない。

周りみたいに趣味もなく、興味・関心を持たない私には実に暇だ。

今頃船長は酒場にいるだろうし、他のデカイ奴らはまた騒ぎを起こしていそうだし、オーガーは千陸の手入れ。

船長とオーガーだけはわかるんだよね、なにしているか。

いつも1人な私はちっともこの海賊団に馴染んでいないとつくづく思う。

でも正直言ってみんな単独だし、仲良さそうにも見えない。

周りに良い男でも歩いていないかなぁなんて見渡すと、ふと目がある物に留まった。

それは雑貨屋さんで可愛い鏡やブレスレットが売ってあった。

私はそのブレスレットに目を奪われたらしい。

やっぱり私も女の子かぁ、とガラス越しにじっと見ていたら、ガラスにニコニコと笑っているラフィットが映っていた。

本当、この人はぱっと現れる。


「珍しいですね」

「何が?」

「雑貨など」


あ、良かった。

彼にブレスレットを見ていた事はバレていない様だ。

私がブレスレットを欲しがっているなんて彼が知ったら、ひたすらからかって嫌味の山だろう。

この前私はそれを見た、それをオーガーに言っているところ。

やっぱり人にはオープンにならない方が良いとその時改めて思った。


「あぁそうそう、酒場で船長がもめごとを起こしたそうで。サラ行ってくれませんか」

「...またか」

「私はオーガーを呼んで来ます」


船長のもめごとを甘く見てちゃいけない。

この前だって血だらけで帰って来たんだから。

私はしぶしぶブレスレットを買うのを我慢して酒場へと足を急いだ。

...なんだかんだ言ってラフィットとオーガー仲良いんだ。

なーんだ、とそんな事を考えていれば近くからゼハハハハハ!と笑い声がしたので今度は血だらけじゃありません様にって祈りながら私は酒場に入った。










それから30分。

やっとラフィットとオーガーが来たので酒場でのもめごともやっと終わり、今私はオー
ガーの怪我を治療中。

船長が1番怪我をしていたけれど、オーガーも凄かった。

第一、ラフィットはなにもしていなかったし。

全くオーガーが惨めに見えて来た。


「はい、終わり。
腕の包帯はまだ取らないでね」

「あぁ、すまない。
さっきラフィットがお前を呼んでいた」

「ラフィットが?」


こくこくと頷くものだから一体なんだろう。

私に用があればだいたい自分から来るのに。

そう言えば今までラフィットが私を呼び出したのって良いことがなかったなぁ。

また今回も良いことではないなと思いながら私はラフィットが座っている樽に駆け寄った。


「なにか用」

「おや、何ですか」

「は?」


眉間にシワを寄せて睨めば、あぁと思い出した様に。

いちいち苛つく人だ。

すると目の前にぐーをした手を伸ばして来たので、なんだ一発やるのかと一瞬思った。


「手を出してください」

「…毛虫とかだったら殺すわよ」

「ホホホ」


だってこの前もこんなことあって、手を出せばカブトムシの幼虫だった。

医者でも苦手なものはあるんだからね!

本当、彼を見ていればそんな嫌な過去が走馬灯の様に蘇って来る。

でもキレたら怖いから思い切って手を出した。


「……あら?」


にゅるにゅるしない?

って言うか冷たい。

ラフィットを見ればまぁ無表情。

怖いな、見るの。

死体か、なんて。


「……え、ブレスレット?」

「さぞ欲しそうにしていましたから」


思わぬ展開。

こんなことも出来たのか、良いところもあるんだな。

ハハ、と顔を引き攣らせて笑う。

なんだか怖いなぁ。


「……ありがと」

「ホホホ、礼は不要です」


なんだこれ。

こ、こここんなこと、されても!

照れくさいなぁ!

ラフィットは私にそう言うと船に戻ってしまった。

取り残された私はブレスレットを片手に呆然と、耳を真っ赤にして突っ立っていた。

オーガーが私を呼ぶまでずっと。


16 November 2011.
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