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もうすっかり周りは暗く、時計を見ると日付が変わっていた。

頸を鳴らし、残りの仕事を全部青木に押し付け、自宅へ足を早める。

毎日こんな事の繰り返しだ。

くだらねェな、と扉の鍵を取り出すと扉が少し開いていた。

扉の開いた隙間から蛍光灯の光が漏れている。

こんな時に泥棒か、冗談じゃねェ。

俺は溜め息を吐き扉を開けた。


「お帰りなさい木場さん!」


一瞬脳が機能を停止した。

俺を待ち受けていたのは泥棒ではなく鳴神だった。

もう驚きも怒りも不思議と何も湧いて来ない。

何度目だ、これは。


「何でテメェがいる」
「暇だったので勝手に待たせて頂きました」
「今度から待つな、それと勝手に入るな」


真夜中なのにえー!と叫ぶ鳴神の頭を叩く。

こんな事言っても聞かないのは百も承知だ。

上着を脱ぎ、地面に放るとそれを見兼ねた鳴神が上着をハンガーに掛けた。


「木場さん!」
「何だ」


煙草に火を付けた。

最近コイツがここに来る回数が多い。

あの探偵と喧嘩でもしたか。


「余りにも帰って来るのが遅かったので私が勝手に晩御飯を作らせて頂きました!」
「あ?」


晩御飯?と聞くと笑顔で台所へ走って行った。

アイツが料理?

…明日槍でも降って来るんじゃねェか。

煙を吐くと中島は両手いっぱいに料理らしき物を持って来た。

それを見て俺は固まった。


「どうですか?自信作です!」


そう言ってへへ、と鳴神は笑った。

見れねェ程の料理かと思っていたが俺の予想は大きく外れ店で出て来そうな普通の料理だった。

何だコイツ、料理上手ェのか。

こんなヘラヘラしてる奴が。

人っていうのはわからねェもんだ、と俺は可笑しくなって鼻で笑ってやった。


「な、何で笑うんですか!」
「いや、何でもねェよ」


拗ねた顔をした子どもみたいな奴は机に料理を並べ、取り皿に料理を次々と取って行く。

それを呆と見る。

意外と女らしいな、と。


「何突っ立ってるんですか!早く食べましょうよ、お腹減って死にそうです」
「解った解った」


何年ぶりか、こんな晩御飯は。

鳴神を盗み見ると、幸せそうに食べていた。

まあこんなのも、悪くない。


(いつから待ってたんだ)
(待ち過ぎて忘れました)
(…。これから非番の日に来い)
(わかりましたー!)


13 August 2013.
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