「聞いているのか!!」
「兄さんなんて大っ嫌いッ」
「敦子!!」
あー、またやってるね。
ずずず、とお茶を啜っている関口先生がそう呟いた。
え?そんな呑気な!
私は秋彦さんが声を張り上げた瞬間からびくびくしている。
あの秋彦さんが怒っている!大問題ですよ!木場さん何とかして下さい!
何で俺が。喧嘩なんていつもの事だぜ。
くぁあ、と木場さんは大きな欠伸をした。
そっそんな!このままじゃあ家がっ。
心配するなよ鳴神君。直ぐに収まるさ。
そしてまたずずず、とお茶を啜る関口先生。
えっ、関口せん、
ーーーガタァァアアアン!!
ヒィイ!今本棚が倒れましたよ…って、関口先生!何でここで仕事してるんですか!
机の上に鞄から引っ張り出して来た原稿用紙を静かに並べていた。
ああ、〆切に間に合わないんだよ…。
そう言った関口先生は照れたように頭を掻いた。
〆切!?こんな時に!木場さん!何かガツンと言ってやってください!
机を軽く叩いて怠そうな木場さんを見た。
知らねェよ。何ならアイツ呼ぶか。いや、もう直ぐ来るな。
面倒くさそうに木場さんは言った。
え?アイツって誰ですか?
関口先生の空になった茶碗を見ながら聞いた。
アイツ?ああ、
「神が来たぞ!!」
…榎さんの事だ。
襖をザァアッ!!と開けて登場したのは探偵の榎さんだった。
声を掛けようとしたけど時既に遅く、榎さんは未だ秋彦さんの怒鳴り声がする部屋へ走って行った。
えっあれ一番不味いんじゃあ…。
そう二人に目をやったけど二人とも周りから関係を絶った顔をしていた。
もう、私は帰る事にした。
(う、うぅぅ…)
(?何で榎さんが泣いてるんだ?)
(知らねェよ。本でも投げられたんだろ)
11 August 2013.
Masse
京極堂は怒ると本棚を倒すと思います.
仲直りしたらちゃんと兄妹で直すっていう.