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時刻は午前七時。

何故俺の家の扉がこんなにも叩かれるのか。

ガンガンガン!と凄まじい音が俺の家の中に響き渡る。

一層の事、このまま目を閉じていたいんだがこのまま放っておけば近所迷惑だ。

俺は仕方なく煎餅布団の中から這い出て、こんな時間に誰が来たのかと考えを巡らせながら玄関に向かって歩いた。

その間にもその野郎は叩き続けてやがる。

扉を開けたら真っ先に殴ってやっても良いだろう。

ガタガタいっている扉をガチャ、と開けると俺はその場に立ち尽くした。


「木場さんッ!!映画を観に行きましょう!!!」


朝っぱらから俺の扉を立て続けに叩いていた野郎は、探偵んとこの鳴神 霖だった。

何でコイツが、と頭を抱えるもこれが初めてと言う事でもなかった。

鳴神はいつものように靴を脱ぎズカズカと部屋へ上がって来た。

コイツも榎木津に似やがって強引なヤツだ。

扉が壊れてない事でも幸いか。


「木場さん!幾ら休暇だと言っても煙草の吸い過ぎは駄目ですよ!」
「あーあー解った解った」


鳴神は居間に座ると机に置いていた新聞を勝手に開き、何か良い事でも思い付いたのかバッと俺を見上げた。

全く忙しいヤツだ。


「今日は時代物を観ましょう!今から支度して下さい木場さん!」


言うと思った。

俺んとこ来たらいつも映画を観に行こうと誘う。

別に映画が嫌いな訳ではないから俺は今日もその誘いを断らず映画を観に行く。

面倒なヤツに目を付けられちまった、と今更思う。

コイツと初めて会った時、榎木津の野郎に俺が映画の時代物が好きな事をコイツに言いやがった。

それからと言う物、コイツも映画が好きだったのか観る時は必ず俺を誘うようになっていた。

俺は女と口を利くのが苦手だった筈だが、コイツだけは例外で映画以外の事も話す。

コイツは他の女とは違って箱の中を見ようとしない。

俺を空箱と見もせず、俺を木場という人間として見る。

こんな調子だから一生そうだろう。


「木場さん早く!私この映画ずっと前から観たかったんです!!」


そしていつの間にかコイツだけが女だと思うようになった。

他の女など、不要だと。


「解ったからお前は外に出てろ!」
「はーい!!」


コイツといる時だけ、自分が屈折していると思わなくなった。

支度を終わらせ部屋を出ると、遅いです!!と言われ、俺は軽く鳴神の頭を叩いた。


11 August 2013.
Masse


木場修には本当に幸せになってもらいたい(笑).

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