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カリブ海。

綺麗な蒼い海はどこまでも続き、ずっと水平線を見ていたくなる。

でもそんな事を考えているのは私だけで、航海に慣れた皆さんはテキパキと自分の仕事をこなしている。


「ぐぇっ」


今回が二回目だが、船酔いには慣れない。

船が揺れると全身も一緒に揺れるので、この船に乗っている以上それから免れる事が出来ない。

カリブ海、クソったれ。

何度そう思うも海は美しい物だ。


「おい」


大砲に半ば捕まっていると、誰かに呼ばれた。

この状況で手伝える事なんて何もないです、と言おうとしたけど見るとヘイザムさんだった。

船が揺れているのに体制を全く崩さず立っている。

やっぱり凄いひとだなあ、と呑気に思った。


「っぎゃ、!」


返事をしようとしたが、大きな波が波寄せた。

それに大きく船は揺れ、必死に大砲にしがみ付こうとしたけど手は空気を掴み、ああ、私はこのカリブ海で死ぬんだ、と視界に映った舵をとっている皆に別れを告げた。


「…これだから女を乗せるのは嫌なんだ」


余りにも近くでヘイザムさんの声がした。

その事で、私は一気に現実に引き戻された。

ハッと目を開くとヘイザムさんが私を抱きかかえるように縁を掴んでいて。

忽ち私の全身は火照り、私はヘイザムさんを見上げながら固まってしまった。

恥ずかしいどころか、このひとに手を負わせて仕舞ったと。


「!?えっええと、あの、」
「ハァ…下にいろ。落ちても知らんぞ」


そう言って何もなかったかのように去って行くヘイザムさんの背中を見る間もなく、私は真っ赤な顔を隠すように下へ降りた。

私はベッドの中で必死にバクバクする心臓を抑えようとしたけど、結局はあの場面を思い出し、また心臓が破裂しそうな思いをした。

次からは絶対迷惑をかけないようにしようと、でも私は内心喜んでいた。

仏頂面で、けど強くて、優しい、そんなヘイザムさんが誰よりも好きだ。


カリブ海、ナイス


11 August 2013.
Masse


ヘイザムさんは絶対優男(断言).

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