One Piece : S/XD
昔から酒には酔わないたちだ。
だからといって酒には手を伸ばさない。
多分今までそんな暇がなかったからだろう。
でも今日は同僚に半ば無理矢理のように連れられて酒場に来た。
酒場は海兵の貸切状態になっており、見慣れた顔が所々にいた。
俺はとてもじゃないが騒ぐ気分ではなかった。
酒場の隅にあるソファーに一人腰掛け、ネクタイを緩めた。
スコッチをグラスに少しだけ入れ、騒ぎ立てている海兵を見る。
酒は記憶の一部を忘れさせてくれるが、一生忘れさせてくれる物でもない。
世の中上手いこといっているんだ、だから酒には溺れるなよ、と普段なら思わないようなことを考えて一人笑った。
昇進してからずっと、他人との距離が遠い。
昔から人付き合いは良い方ではなかった。
他人との間にひとつ線を書く自分がいる。
…何を今更そんなこと考えるんだ。
あぁ、酒のせいだ。
俺は飲んでもいないグラスをテーブルに置いた。
「よう」
低く不機嫌そうな声。
見上げると、スモーカーが手に何本もの酒を持って立っていた。
そうだった、こいつも酒には強いんだった。
ドカッと俺の隣に腰掛け、酒をテーブルに置く。
「いいのか」
「何が」
「あっちに行かなくて」
「あぁ」
「そうか」
酒が入ったグラスを手に取る。
そういえばこいつが酒を飲むところを見たことがなかった。
意外に弱いのか。
まぁそれはないだろう。
永遠とも言える沈黙がスモーカーとの間に流れた。
グラスに酒を入れるのが面倒になったのか瓶ごと飲んでいる。
冷め切ったスコッチを眺めた。
「煙草、吸わないな。禁煙か?」
この男が禁煙など死んでもある訳ないのにそんな言葉が出た。
私室では灰皿が埋まるほど吸っているにも関わらず、この数時間一本も吸っていない。
「何でだろうな、」
「何が」
「お前の前で吸いたくねェ」
空の瓶の水滴がゆっくり落ちる。
懲りない騒ぎ声が消音になる。
「そうか」
やっぱり好きなんだと思う。
今までこいつを嫌いになったことなんてなかったが。
「ちょっとこっち来い」
酒が残っている瓶をテーブルに置き、スモーカーが静かに言った。
それほど離れていないスモーカーに身体を寄せる。
微かに匂う煙草の匂い。
スモーカーを盗み見れば真っ直ぐ前を見ていた。
一人酒は嫌だが、二人なら。
こいつがいてくれたら俺はいい。
酷く幼稚な考えに少し声を上げて笑った。
「ドレーク」
「何だ?」
俺がずっとお前の傍にいてやる。
だから安心しろ。
そう言ってスモーカーは酒に手を伸ばした。
2 August 2013.
Masse
なんか絶対お酒ネタ書かないと気が済まない(笑).
ドレークは周りよりも頭が切れる人なので,孤立し他人に依存しない.でも心では誰かに自分の傍にいて欲しいと思っている.だからスモーカーはそんな言葉をかけました,という話.
ドレークの事についてはまだ謎なので勝手に想像しています.