あのころ、齢16歳。
陳腐な言葉になるが、ここでは本当に多くのことを学ばせて頂いた。

自分が如何に使えない人間か。
何をやらせても失敗ばかりで、とにかく足手まとい。どこまでも人並み以下。
接客はさておき、同僚の類の人たちと関わるとなるとどうもダメなのだなとはっきり自覚もした。

レジでお客様が「お願いします」「どうも」と一言くださるだけで随分と印象に残るものなのだなとひたすらに感心した。社交辞令の一歩手前ていどだとしても、何だか嬉しかった。
おかげさまで今に至るまで、どこのお店でもこの言葉を欠かすことはない。
敬語も少しは身についた。
掃除や商品の並べ方も、ひとつ気を配ってみるたびに、ひとつ何かそれまでの枠を省みるきっかけになった。

はじめて自分で稼いだお金。
それを握りしめて本屋さんに駆け込み、買ったのが『はてしない物語』。
はじめてのセクハラ(店長による)。
はじめての金銭を伴う責任。
はじめての社会的な理不尽。
はじめての有償の感謝。
はじめてつきあった男の子との出会い。
はじめての「辞めます」。
そういえば、さかのぼって、はじめての履歴書、そして面接。
はじめての、広くて大きくて、偏狭で、ある意味では公正な世界。その矛盾。
自分のものでは全くない時間。
お仕着せの感覚。主張。妥協。損と得。計算。打算。混乱。当惑。割り切り。
黙って呑み込むこと、頭を下げること、どうせなら潔く譲ったり泥をかぶること、だけど善意や良心を見逃すまいと不器用に、頑なにあがいたこと。
そしてそれらは確かに存在したこと。

そのすべてに、ありがとうございます。
どうもありがとうございました。
長いこと、本当にお疲れ様でした。



ご多幸をお祈り申し上げます。

151121 0105
一言


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