まず絵と呼べなくもないものをノートに描きつけ、そこから人形風のデフォルメ具合と、そうこうしている内に浮かんだアイデアやらメモを記し。こういったことを繰り返して、何となく下絵らしきものができたら、あとは布と針と糸の出番。



以前からやってみたかったこと、表に線を引いてそのまま縫う方法を今回は採用。余分な縫い代は適当にカットするけど、縫い目はそのまま見えることになる。
その素朴さが好きだなあと思うのだけれど、たとえばどんなデザインに向くのかとか、そうすることによるメリットなどはとんと分からぬまま。まあ、やってみれば結果が教えてくれるだろう。



仮にもマリア様なので、衣装の部分は白系。これはコットン素材でかなりふわふわしている。それもマリア様っぽい。しかしよくよく見ると大きなリボンがプリントされていたりもする。永遠の乙女ですもの、マリア様だってこっそりおしゃれもなさいましょう。



今回はあくまでもざっくり、ということで、切りっぱなし。縫い目も隠さずにさくさくと。



おかげさまで3時間ほどで完成……した瞬間、マリア様ではなく、かさじぞうに見えた。
更にじっと眺めていると、聖母どころか、となりの村の与作さどこ嫁入りだべったとか言い出しそうだ。何だろう、戦時中に急な婚姻が決まって、とにかくあるもので白無垢に近い花嫁衣装を整えました、といった風情が漂う。



後ろ姿だけは思惑どおりになった。リボンのプリントの部分を利用して星の模様をかたどった、つもり。マリア様、別名、海の星です。マリア・ステッラです。

この微妙なマリア様の何がおかしかったか、一人反省会を大々的に開催した。
結果、衣装デザインの段階で誤解があったことに気づいた。
マリア様の衣装は様々なバリエーションがあるけれど、基本は白の長衣に水色のベールを兼ねたローブ。長衣は胸からギャザーが入っていて、腰帯で調節してある。そして頭部に髪を三角巾のような……何と言うのだったろう?あれの一部が額の上部を覆っている。
私は長衣とローブを重ねず、それぞれ独立させてしまった。青の生地が頭から垂れていないと正式ではなかったのだ。
が、そこは人形なので、あまり現実に忠実すぎてもかえってスマートではない。少なくとも、今回はそこまでリアリティを求めていなかった。
とはいえ、基礎としてあるべき知識はちゃんと持っていた方がいい。何かをする度にその引き出しを開けて、そのときどきの発想と照らしあわせると、きっといい。これは人形づくりや手仕事だけの話ではない。
背後のベールに星のようなものを見せたいという気持ちが優先すれば、この現実的な仕様は適用できなかった。縫い目を見せる大ざっぱなやり方だったので、それに見あう面白い仕上がりになったとも思っている。
だからこれはこれでいいのだということにしておくが、あくまでも偶然にも悪くない結果になっただけということを忘れてはならない。
後は、最初に中表にしなかったことで出来た、見える縫い代を活かしきれていない。
実際にやってみてわかった気がする。これがたとえば、衣装の部分をすべて刺繍で施すのだとしたら最適だった。
今回は結局、人形本体の見える縫い代がひとつも見えないかたちになってしまったので、まったくもって無意味であった。比喩的に、衣装部分から透けてみえる妙な味わいは出たけれど、これも結果論。良く言えば素朴、普通に評価するなら雑、悪く取るとしたらあらゆる道具と時間の無駄づかい、そして聖女に対する許されざる冒涜。
最後にひとつ、収穫を。かねてより、刺繍糸でレース編みはできるのだろうかと思案していた。今回、好機と捉え挑戦してみたところ、可能であるという結論に至った。二本取りでレース針6号なら特に問題なく編める。ただし、糸は長めに切っておかないと非常にやりにくい。
画像でも肉眼でもまったく分からないくらいささやかだが、あのクロシェの中央にフレンチノットステッチが入っている。レース編みと刺繍の融合、これはもっと追求したい。
もうひとつ。良い部分があるとすれば服をぐし縫いにしてギャザーを寄せたり、地味なところで工夫をしていること。切りっぱなしにしているのも、マリア様はあまり立派すぎない方がいいという考えがあって、でも手は抜いていない、と断言できること。

さて、最後の最後にもしやと戦慄したことをば。
モデルにした像がマリア像ではないかもしれない。
手に十字架と薔薇の花束……恐らく、幼きイエズスのテレジア、別名、小さき花のテレーズだ。
いや、でも地球を足の下に置き君臨する姿は無原罪の聖マリアの象徴のはず……どうなんだろう?あれ?蛇だったっけ?両方?
本当は花のクロシェをもっと作って飾りつけるつもりだったが、このマリア様があまりにも泥くさいというか、質素というか、花なら一輪で完全に満足していそうなので(聖母も同様だろうが)やめておいた。過ぎたるは及ばざるが如し。そして自重して正解だったということに。もう否定しようもなくテレーズの印象になってしまうところだった。
ただ、足先に薔薇が一輪ずつというマリア様像もある。マリア様にリベンジするなら、それだな。ルルドのマリア様。重要なポイントは水色の腰帯とロザリオ。
その際は中表方式で作る。縫い目が見える人形はもっと模索してから。たぶんフェルト生地を使うといいんじゃないかなという予感はしているが成形方法がまったく異なるんだろうなあ。おもしろい。

140719 2056
一言、人形


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