じゃすらっくにお金を要求されたくないので適当にぼかすが、「天は雨にもっと働らかせるべき、そして私のダーリンをつれて来させるべき」といった歌がある。その部分しか知らない。一方で「母親がレトロなカサを持って迎えに来てくれるからやっぱり天は雨にもっと頑張らせるべき」という童謡もある。前者はなぜ雨が降ると恋人(?)が来るのか、そこのところの因果関係がまったく判然としないが、とにかく彼女のなかではそういうことになっているらしい。この2つの楽曲を組み合わせて妄想するとこうなる。雨が降り注ぐ夕刻、国鉄の駅前で母の迎えを待つ長靴姿の男子児童。母親がちょっと諸用に時間をとられ遅れて登場。はじめこそ母をなじる男児であったが、そろそろお父さんの帰りの電車が来るころだから待っていて3人で帰ろう、と提案。しかし父親が通勤に使うとある路線は雨で増水しやすい河をまたぐ関係から平均約12分の遅れが発生することが多く、その経験則に従い雨の日だけは定期を使わず切符を購入し別ルートを辿ることが恒例となっていた。結果的に父の帰りは普段より30分ほど遅くなる。そのことを母親が説明すると、じゃあ一番ちかい私鉄の乗換駅まで迎えにいっちゃおうよとねだる無邪気な男児。苦笑して了解すると母親。切符を買い、駅員に順々にハサミを入れてもらい、ちょっとぜたいくなお迎えに向かう母子。件の駅に到着、改札よりわざと少しばかり離れたところでくすくす忍び笑いをしつつ待ち伏せる。やがて父親を載せた電車が到着。改札で駅員さんに切符を渡したその左手に光るものは天井からつと落ちた雨のしずくだけ。と、次の瞬間に妻子の姿を認めてにわかに緊迫する父親。だがすぐに笑顔をとりつくろい3人で川の字になって帰途へつく。振り向きはしない。揺れるランドセル、少し乱れた長い黒髪、湿気でついたスーツのしわ。彼らの後姿を見送るのは深めにかぶった帽子からのぞく駅員の瞳。右手には切符バサミを持ち、次の客が来るまで無意識に左手の親指で薬指をなぞる。

130723 1826
一言、ネーコンのねこ


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