「初めまして、お久しぶり」




道路から事務所を見るとおっさんと依頼人のギルバさんが親しげに会話していた
事務所はガラス張りなので外からも見えるのだ
嫌々だったのになんだあの笑顔は。まんざらでもないじゃんか
そう思いながら扉を開ける

「ただいま」

とダンテに声をかけ、ギルバさんに頭を下げてからキッチンに向かった
買ってきた物を仕分けている時にふと二人を見るとテーブルにはカップも何もなかった
……あのおっさん茶ぁくらいは出せよな。
そう呟きながら三人分のカップをとりだし、珈琲を注ぐ
紅い薔薇の模様のカップはダンテので、相変わらず趣味が悪いと思いながらミルクと砂糖を多めに入れた
客人用のカップはまだ洗っていないので仕方なくあまり使用していない蒼い薔薇のカップ(ダンテのとペアだったらしいが俺が使いたくないと頑なに拒否したら軽くお蔵入りしていた)にブラックを注いでトレーの上にミルクと砂糖を何個か一緒に置いた。
俺用にもう一つ真っ黒のシンプルなカップにブラックを注ぐ。
そうしてから二人の元へ向かい、テーブルの上にギルバさんの、事務机にダンテと俺のを置いた
そしてから事務机に寄りかかった

「ありがたい。」

ギルバさんはそう言うとミルクや砂糖には見向きもせず、ブラックのままカップに口をつけた
ある程度飲むと口からカップを離し、ダンテに向き合い話し始めた

「にしても相変わらずのようだな。」

ギルバさんはダンテを見ながらそう言った

「何が相変わらずなんだ?お兄様」

ダンテは茶化すようにそう言って、これでもかという程、事務机に置いておいた砂糖とミルクを甘い珈琲の中に入れた
客人に“お兄様”なんておっさんの頭はとうとう終わったのかと俺はダンテを見つめた
おっさんは俺のそんな視線に気付いたのか定かではないが苦笑いに近い笑みを浮かべた

「でもまぁ、坊やが居るからなぁ。結構楽させて貰ってるかな」

「今日からあんたの分作らなくて良いよな?金もださねぇし」

「ごめん。ちゃんとやるから許してネロ」

俺が言った脅しにおっさんは土下座する勢いでそう言った
俺はフンッと鼻で笑うとダンテを見て

「てかさ、前からの友人のように仲良いみたいだけど。知り合い?」

と疑問を唱えてみる
一瞬キョトンとした顔を浮かべてから二人はお互いの顔を見合わせた。
そしてからダンテは豪快に笑い出し、ギルバさんも豪快とまでは言わないが肩を震わせ静かに笑い始めた

「なっ!なんだよ!!何かおかしいこと言ったか?!」

急に笑われたので恥ずかしく顔に熱が溜まっていくのが分かり、隠すように声を荒げてそういった
ダンテは目に涙を溜めながら

「いやぁ、坊やが気付いてないなんて思ってなかったからさ。てっきり俺に対してと同じ反応が右腕に感じられているモノかと思っていたから」

と言った
最近あんたと長い間一緒に良すぎて反応が鈍ってきたんだよ
なんて言ったらまた笑われたりからかわれるのだろうと思って口を閉ざした

「ネロ」

とギルバさんが急に俺の名前を呼んだ
何事かと思ってみると彼は顔の包帯を取り始めた

「何やってんだよ?!そんなのとったらやばいんじゃね?!」

と言おうとしたが途中で口が止まった
ギルバさんの包帯の下からは俺とおっさんと似た銀髪が現れ、ダンテそのものといえるような顔がそこに現れた

「改めて。初めまして…まぁ事実上お久し振りだが覚えてないだろうな。俺はダンテの双子の兄、バージルだ。」

ギルバさんであったその人はそう言った







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