孫と大天狗 2/3



昨夜、何か胸騒ぎを感じて田沼は夜眠れなかったらしい
気晴らしに縁側で細い三日月を見ていたんだそうだ
すると頭に痛みが、耳に声が入って来たんだそうだ
「あなたは田沼様ですか?」
と言う声
田沼はできる限りの声を出して
「父は留守にしているが、父に何か用か?」
と聞いたらしい
すると声は
「いいえ、私が用があるのは田沼要様です」
と言った
田沼は訝しげに
「確かに俺が田沼要だが、何か用か」
と聞いた
すると声は嬉しそうに
「やはりあなたがッ!!ずっとお探ししていました!!」
と言ったらしい
田沼は脳裏で妖怪を助けただろうかと記憶を探したが記憶の中に何か助けた記憶はなかった
すると強い風が吹いてカランという下駄の音が耳に入ってきた
誰だと田沼が目を開けると目の前に山伏の服を身にまとったカラス天狗が現れたらしい
カラス天狗は田沼に跪くと
「お覚醒め下さい」
と言ったらしい
急にやって来てなにを言ってるんだと首を傾げながら田沼は
「いや、起きてるから今お前と喋ってるんじゃないか?」
といったそうだ
まぁ確かに普通に考えればそうだが、天狗がそんな事気にするわけないだろと心の中で小さくツッコミを入れた
天狗は「そうではなくて!」と言ってからまた葉を紡いだ
「要様は大天狗になるお方なのです」
天狗は凜とした顔でそう言った
田沼は口の中で小さく「大天狗」と呟いてから
「よくわからないんだがもう少し詳しく説明してくれないか?」
と天狗に言ったらしい
天狗はこくりと頷くと説明を始めたそうだ


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天狗の大半は人から…僧がなるらしい
また僧の子が霊力が高いと僧の力、僧の修行をしなくてもなる場合があるらしい
なので子の姿をした天狗は基本そういう子ばかりだそうだ
そういう子は大半が子天狗という階級が低いのに当てはまるらしいが
大天狗…つまり階級の高い天狗は本来驕り高ぶった僧が恨みを持ち死んだ場合か徳の高い僧が何らかで死んだ場合なるらしい
だが、田沼は驕り高ぶった僧でも徳の高い僧でもない
いや、まず僧という自体間違ってる。
ただ霊力は少なからずあるので小天狗なら理解できる
だが先程の天狗は田沼に大天狗になれと言っている
と言うことは田沼に何か特別なものがある
それは俺も田沼も知らなかったことで、にゃんこ先生でさえ気付かなかったものだ。
そして知る人物はあの的場さん(田沼は清司さんと呼んでいた。つまりは知り合いなのか?)と田沼の父、そして天狗達だけらしい
そして田沼が毒気に当てられやすいのも此処にあった
田沼は小さい頃に崇高上皇と言う菅原道真のような道順を辿り、日本三大悪妖怪(にゃんこ先生曰わく今は一匹もおらん。そうだ)の一人に大天狗になってしまった人の天狗である部分が封じられてる珠を飲んじゃったらしい(天然と言うか何というか…)
そしてその珠は日に日に封印が解けてきて田沼の中で知らないうちに弾けたんだそうだ
そして弾けたその日から田沼は妖怪を感じやすくなり、毒気に当てられやすくなった
まぁ妖怪と人間の中間に居るようなものだから感知しやすくなるのはわかる
毒気に当てられやすいと言うのは体が浄くなりたいと思っているかららしい
天狗は僧からできるもの。
驕り高ぶっていようが清いことには変わりはない
つまり天狗の部分が田沼を守ろうとして、毒気を敏感に察知するようになったらしい
そして今天狗に相応しくなった田沼は大天狗として覚醒せねばならないという事らしい
因みに霊力と一緒に崇高上皇の力もあるので天狗として相当な力を持ってるみたいだ
それにあの住職も合わさってトリプルコンボだからなお凄い
因みに的場さんは飲み込んだ時に診てくれたらしい
的場さんはわざと放置したんだろうな
天狗になったら強いし



その話を田沼は静かに聞いていたんだそうだ
そして話が終わった後田沼は天狗に向かって
「で、俺はどうしたらいい?」
と聞いたらしい
天狗は
「もし、天狗になる気があるのでしたら今すぐにでもなっていただきたく思います。」
と答えた。
「何故」と田沼が聞くと天狗は周りを気にしながら声を抑えて
「ここ最近天狗が人を虐めることが多いのです」
統率者がいないから。
天狗はそう答えた
田沼ほどの力があれば天狗を統率出来るのではないかと天狗は考えたらしい
そうすればみな人を無意味に虐める事はないのではないかと
確かに一理あると田沼は思った。
だが田沼がなると言う事は何も知恵のないヤツが生意気に力付けて偉そうにしていると思うヤツもいるのではないだろうか
それが不安で仕方ないのだそうだ
天狗は「それなら大丈夫です」と答えた
「そんな奴らは祓い屋に退治されますから」
そう言った
それはそれで寂しいな。
田沼はそう、天狗に言うと承諾した

そして、田沼は大天狗として覚醒したらしい






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