多軌誕



先日5月15日は俺の想いを寄せる多軌さんの誕生日だった。
一方的な片思いだけど誕生日は祝わないと!と意気込んで多軌さんと俺よりも仲が良い(でもどっちかが多軌さんと付き合ってるとか恋愛感情を抱いてるって事は無いらしい)夏目と田沼、そして何となく北本も誘って隣町まで行って誕生日プレゼントを買ったのは1週間以上前の話。
自分の所持金を殆ど使い果たす程のプレゼントではあったが、俺の好意うんぬんよりも気に入ってもらえると嬉しいと思った。そして微笑んでくれたら俺は所持金を使い果たして良かったと思えると思う。そうじゃなくても多軌さんが喜んでくれるなら本当に嬉しい。俺の好意なんて気にせずに
俺が"コレ"を購入したときの北本の顔は凄かった。こんなに払ってどうすんだと呆れたのだろう。それか俺にこんな高価なもん買ってくれたこと無いのに!という憤りかもしれない
確かに北本の事は良い親友だと思ってる。勿論田沼や夏目も。
だけど多軌さんは違う!特別なんだ!と言ったら北本に「お前、悪い女に誑かされて貢ぐタイプだ」って言われた。
田沼が男前に「そんなことさせない!その時は俺が何とかする!」って言っていたが、田沼、それは俺じゃなくて可愛い女の子に言ってくれと思う。無駄に男前なんだから。
夏目と田沼は夏目の家の猫に似た小物を買っていた。
そう言えば多軌さんは夏目んちの猫好きだよな。あんなブサイク猫のどこが良いのか俺には分からなかったけど、多軌さんが可愛い可愛いっていうから可愛く見えてきた。
もう重症かもしれない。
因みに北本は「彼女の趣味分からないからなぁ」と言って女の子らしいモノを買っていた。
流石北本。妹がいるだけ合ってなんとなくで多軌さんの好みを見つけた。って田沼と夏目が言ってた。
いいんだ!俺は多軌さんへコレをあげたいんだから!!

そんなこんなで買った"モノ"をなくさないように引き出しにしまって毎日確認しまくった。
そして俺は当日忘れずに鞄の中に入れた。家を出る前に何度も存在を確認したほどに。
そして意気揚々に家を出た。登校中に多軌さんがいないかなと周りをキョロキョロしつつ歩いていたので不審に思われたかもしれない。でも気にしない!だって多軌さんのためだから!
だけど登校中に笹田や夏目達とは逢うが多軌さんと会うことはなかった。
ふと不思議に思ったけど、昼休みに多軌さんのクラスに行こうと決めてその時を過ごした。
だけどやはり気になって授業も集中出来なかった(この事を夏目に言ったら「いつもじゃないのか?」と言われた。俺泣いても良いよな?)
そして昼休みになるとダッシュでポケットにプレゼントを詰め込んで俺は多軌さんのクラスに向かった。
さほど遠くない多軌さんのクラスに着くと開いてる扉から教室の中を見て多軌さんを探した。
どこにも姿がないので近くを通りかかった多軌さんのクラスメイトの友達を捕まえて聞いて見た
「なぁ、多軌さんしらね?」
「多軌さん?多軌さんなら今日休みだぜ?」
・・・・・・・・・今此奴なんて言った?
多軌さんが休み・・・・?
俺はそいつにありがとうとお礼を言うとふらふらとした足取りで自分の教室に帰った

その後夏目や田沼、北本が俺に何か言っていたと思うが耳に入ってこなかった。
後の話によるとその時俺から生気を感じなかったとか

その後夏目達が俺に気を遣って多軌さんの家に行くか?と尋ねてきたらしいが俺はそのまま家に帰宅した。
そして俺は部屋に着くとプレゼントを机に置き、そのままベッドにダイブした。
そしてそのまま眠りについた。


気づくと16日になってから4時間経過していた。
俺はすっきり目覚めた頭をを忌々しく想いながら前日入っていない風呂に入った。
そして
親が起きてこないのでとりあえずあまりすることがなかった散歩に出かけた。
沈んだ気を和らげるために出来るだけ遠くまで歩こうと思った。
「あれ、西村君?」
家から少し行くか行かないかの辺りで急に声を掛けられた
誰だろうと思うと同時にどこか自分が待っていたような声に俺は思いっきり声の方を見た
「あ、やっぱり。おはよう西村君」
そう言って彼女は微笑んだ。
夏目並に色素の薄いセミロングを靡かせ彼女は近づいてきた
俺は彼女を見た瞬間声が出なかった。
何で此処にいるのか、風邪は大丈夫なのか、聞きたいことは沢山有ったけどのど元からそれが出ることはなかった
どうしたの?と不審げに首を傾げる彼女を見て、視界がぼやけ始めた
元気そうで良かった。そうホッとため息が出たと同時に言わなきゃいけないことを思い出した
俺は目に貯まった涙を右手で拭うと多軌さんの手を掴み「ちょっと時間ちょうだい」と頼んだ
彼女は不思議そうに首を傾げながらいいよといった。
俺はその言葉を聞くと彼女の手を引いて自分の家まで歩いた
まだ5時。母親は起きてるかもしれないけど他は寝ているだろう。
家まで着くと外に多軌さんをおいて自分の部屋へと走った。
昨日のままなら机の上にあるはずの"ソレ"を取りに行くために
部屋について家族を起こさないように勢いよく扉を開いた。
そして視線だけで机の上を確認すると、"ソレ"はそのままそこにあった
俺はホッと胸をなで下ろすとソレをとり、さっき来たルートを早歩きで辿った。
玄関のドアを開けると、家に入る前と同じ状態で多軌さんはそこにいた
「そんなに慌ててどうかしたの?」
そう聞いてきた彼女に俺は一瞬恥じらったが、勇気を出して彼女に告げた
「一日遅くなったけど、誕生日おめでとう!」
彼女は一瞬驚いた顔をしたがすぐに嬉しそうに微笑んで「ありがとう」と言った
「これさ、多軌さんに似合うと思って買ったんだ。受け取ってくれないかな」
彼女にプレゼントを私ながらそう告げると彼女は「もちろん」と頷いた
そしてプレゼントを受け取った彼女は「あけていいよね?」と聞いて返答も待たずに中の"ソレ"を取り出した。
綺麗なアクアブルーのビーズで作られた指輪と群青色のブレスレット
そんなに高くなさそうに見えるかもしれないけど俺にとっては結構高いソレを彼女は嬉しそうに受け取った
そして彼女は指輪の方を取り出すと
「付けてくれるよね、西村君」
と俺に差し出した
俺は喜んでソレを承諾すると受け取り、彼女の右手をとろうとした。
彼女はそっちじゃない!と言って左手を俺に突き出した
どういう事だと想いながら右手をとり彼女を見つめると彼女はおかしそうに笑いながら
「左手の薬指に付けるのが普通なんじゃないの?」
と言った。俺は一瞬固まったが多軌さんの左手の薬指にその指輪をはめた
「それでこそ男よ!西村君」
そう言って彼女は微笑むと左手でそのまま俺の手を掴み起き上がらせた
そして彼女は嬉しそうに満面な笑みを浮かべると
「じゃ、責任とってよね!」
と言った
俺は唖然とするしかなく、その後彼女が「じゃ、また学校で会いましょう」と言うまで固まっていた。
惚れた方が負けとはよく言ったモノだと思った瞬間だったかもしれない





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