「何でだと思います?」 2/3



「あぁあ。雨降ってきた。」

黄巾賊の集会の帰り道、雨が降り始めた
沙樹は家に待たせてるから安心だとして…
問題は俺自身にある。
傘などなしに手ぶらで集会に行ったんだ。
と言うことは雨にずぶ濡れと言うことだ
いやぁ困ったもんだよなぁ
雨降らないと勝手に勘違いしてたんだもんよ。
取り敢えず直で濡れるのを避けるためにフードを被って走る


家の前まで来て驚愕した
――なんでアイツがいるんだよ
臨也さんが仕事を持ってきたと待ってたわけでもなく
沙樹が遅いからってタオルを持って傘をさして待ってたわけでもなく
帝人や杏里が俺んちを見つけたわけでもなく
そこにいたのは――

「―…今晩和。紀田“先輩”」

女の様な笑みを浮かべながら微笑む童顔少年
裾の長い白いパーカージャケットを羽織り右手からは包帯が垂れてる
奴が最近帝人に近付いている黒沼青葉だと分かる
俺は静かに眼を細めながら

「何で此処にいる?」

と相手に向かって訊いた
奴はククッと笑うと

「何でだと思います?」

と聞き返した
俺はパーカーのポケットに手を突っ込むとおどけた様な笑顔を浮かべながら

「さぁ?俺には分かんないなぁ」

と言った。
奴は一瞬一発で分かるような殺気を放つと心を落ち着かせるため笑顔を作ると

「やだなぁ。ご自分で考えて下さいよぉ」

と言った。
知るか。考える気もない
奴はにこやかな笑顔を浮かべながら近付くと目付きを鋭くさせて俺にとって残酷な台詞を吐いた

「貴方の自分勝手な正義感であの人は死んだんですよ」

――つもりらしい


「―――…それが?」


吐き捨てるように俺は奴に言った
そんなのあの時に気付いてた
逆に気付かない方が可笑しいくらいにはっきりと
チラッと奴の顔を見ると忌々しいとでも言うような顔をしている
勝ち誇っていたとでも思ってたのか?

「わかってたんですか…?なら何故今黄巾賊を動かしてるんですか?!」

…なるほど黄巾賊を動かしてるのは未だ生きてると思っているから
俺に忠告しに来たってわけか

『邪魔すんな』

その一言だけのために…
俺は密かに溜息を吐くと黒沼の横を通り抜けた
そして一言

「死んでるからこそ動かすんだよ」

そう、ただその一言だけ。





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