それは優しい吸血鬼の微笑み




「吸血鬼って吸われている人の痛みを考えた事ありますか?」

初めて訊かれた問いではないが彼の口から聞くのは意外だった
痛みとか気にしないような人だったからかもしれない
つい彼を見つめてしまった
彼は整ったその顔で苦笑を描くと彼女に微笑んだ
そして彼女の目の下頬元に手を添えると
「目玉落ちちゃいますよ」
と言った
「…急にどうしたんですかぁ?」
彼女はそう質問した
本当に突拍子も無い事だったので少々驚いたのだ
彼は「あー」と呟くと苦笑して
「いえ、昔人の痛みを知って解体したり殺したりする人がいましてね。
その人たちをふと思い出したんです。」
と答えた
不思議な人だと思った
痛みを知ってなお解体やら殺しやらする人なんて変な人以外なんでもないではないか
そして何故彼女に血を吸われていてなおそんな事を思い出したのだろうと首を傾げた
「そうは言ってもソレは貴方のネットワークでの記憶ですよねぇ?」
彼女がそう聞くと彼ははにかみながら微笑んだ
未だに思い出すなんていい人達ですねとまた彼女は付け足した
「いい人達でしたよ。私たちの“姫”を大切にしてくれましたから」
姫とは前話してくれたルッソファミリーというマフィアのボスを遣っていた少女の事だろうと瞬時に理解した
「お姫様だけじゃなくて貴方も大切にされていたんじゃないんですかぁ?」
彼は一瞬驚いた顔をするとまたはにかんだ
そして急かすように話をずらすように
「答えは?」
と訊いてきた
そんなの決まってるじゃないですかぁ
彼女は先にそう前置きすると
「知らないです」
と答えた
彼は寂しそうに微笑むと
「でしょうね」と呟いた

「確かに貴方の痛みは知らないですけどぉ想像はつきますから」

彼女はそう言って微笑んだ





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