白石誕 四天宝寺







『♪おーさかー なにわ してん ほほほーじ♪』



厳寒な冬から段々暖かくなり、4月中旬に差し掛かった頃
暖かい日差しがベッドを照らし、ぬくぬくとした布団で寝ていたとき最近鳴り響くことのない着信音が流れた
彼は携帯を撮ると重い瞼を無理矢理持ち上げ画面を見る



『監督』



懐かしいなと頭の端で思いながら通話ボタンを押し、電話を耳元に添える


《お、寝起きの声やな、白石!部活が無いからって気ぃぬいとるやろ!ちゅーわけで、ユニフォームのこっとるならそれ持ってテニスの準備して中学校に至急集合!!勿論お前だけちゃうから安心してこいな?ええな?まっとるで!白石元部長さん》


勢いよく切られた電話を見て、相変わらずのテンションに小さく笑った
温もりのある布団から名残惜しくも出る。

そしてクローゼットから服を取り出し着替える。
ふと着替え中に視界に虫かごが入る
何もいない虫かごを見て儚さを覚えながら虫かごに口づけをし、「ちょっと行ってくるな、ガブリエル」と呟いた
もういないあの子がいるような気がして虫かごに微笑みかけた
そしてから久しぶりに中学校の時のユニフォームを手に取り丁寧にテニスバッグに詰め込む
忘れないようにと携帯をポケットに忍ばせる。
そしてから久しぶりのテニスバッグを担いで母校である中学校へと足を向け、歩き出した。



中学校に着くと人の気配が感じられないくらい静けさに満ちていた
もしかしてどっきり?そう思いながらも部室へと足を運ぶ
流石に部室までいなかったら帰ろう。そう思いながら・・・
後ろに2人ついていると言うことに気づかずに・・・・。



部室の前まで来たがやはり人の気配が感じられなかった
不審に思いながらもドアノブに手をかけ回す
鍵は掛かっておらずすんなりと回った
「不用心やな・・・」
そう思いながらもドアノブを引いて開けた
瞬間の出来事だった
感傷に浸っていた所為か隙が出来ていたらしくドンと背中を押された
バランスを保てなかった所為でそのまま前のめりに転び、部室の中に入った
何かが倒れる音、壊れる音がしたなと思い衝動的に閉じた瞳を開いた。
「うっわこわ!!」
部室内一面にこけしこけしこけし・・・・地味に怖い。
下敷きになってしまったこけしは首がもぎれたりして尚更恐ろしさが倍増している
今朝電話をかけた監督の所為だと理解し、こけしを成仏してから立ち上がり踏まないように歩き出す。
扉までついてからドアノブに手をかける
開く気配はなく、外から鍵が掛けられていることが分かれば窓を狙おうとする。
窓の方を見るとそこまでするかと言うほど木の板が張り付けられていた



出す気無いんだなと苦笑を浮かべた
とりあえずジャージに着替える。
よく考えれば部室の外から気配が沢山あるので、何かあるのだろうと察した。
着替え終わり、ラケットを手に持ち感触を確かめる。
やはり身体は覚えてるものだなと思い長い相棒に微笑んだ
すると急に扉が思いっきり開かれる
何事やと思いながら扉へ顔を向ける
赤茶の髪を靡かせながら、最後に見たときとさほど姿が変わってない後輩が立っていた
「白石!俺と勝負してくれへん?」
幼さを忘れぬ顔で二カッと彼は微笑んだ
「ええよ。どれくらい上達したか見たる」
そう言って金ちゃんへ、コートへ向かって足を進める
久しぶりに立ったコートは足に馴染んで“身体が覚えてる”という単語が脳裏に浮かんだ
確かにその通りやと思いながらテニスボールを握った
「いくで、金ちゃん」
そう言ってボールを高々と投げた



結局7-6で俺が勝った
金ちゃんが上手くなっており本当に驚いた
「で、金ちゃん。他のみんなはどこなん?」
息を整えながらそう問いかける
金ちゃんは澄ました顔でどこやろ?と言い放った
これは金ちゃんもグルやなと確信すると左手に巻き付いてる包帯を緩めた
「金ちゃん」
そう名前を呼ぶと彼は顔を真っ青にして
「部室や!!今部室におる!!」
と言った。どうやら金ちゃんは時間つぶしだったようだ
そうだと分かると緩めた包帯を治しながら大きくため息をついた
恐る恐ると言った具合でこちらを見てきた金ちゃんに微笑みかけ右手を伸ばす
「ほな、一緒にいこか」
金ちゃんは嬉しそうに微笑むと俺の手を取った


「ハッピーバースデイ!!!!」
部室に入るとクラッカーと共に声が鳴り響く
真ん中を開けて両端に元四天宝寺レギュラーが並んでいる
そして真ん中奥には椅子が置いてあり、周りを囲むように箱が山積みに置かれていた
「今日は白石の誕生日やろ?テニス部員とお前のファンからのプレゼントや」
謙也がいたずら成功したように微笑みそう言った
「ハートの箱はうちとユウ君からやで!」
「一緒に考えてん!」
そう言ってラブルスの二人は俺に近づいてきた
「早く座ってください。あの椅子、部長の為にあるんで」
そう財前はぶっきらぼうに言い放った
何気なく隣で拍手している銀の服の裾を掴んでる辺り、恥ずかしいんだと理解した
「そや!ほら白石!」
急に金ちゃんはそう言って俺の手を引っ張り椅子へと駆けだした
そして無理矢理座らせると小石川に持って貰っていたんだろうものを受け取りまた俺に近づいてきた
「おかんがな、白石にはこうゆうのがええやろっていっとたんや」
そう言って差し出された青い花。竜胆だと思われる花
「あんがとさん」
そういって金ちゃんの手からその花を受け取り微笑んだ。
金ちゃんは嬉しそうに微笑むと千歳の元へ駆け出した
千歳はそんな金ちゃんをよかったなーと微笑み頭を撫でた
「じゃ、写真撮影といこか!白石!格好良くきめろや!」
そう言ってどこからか取り出したスタンド付きカメラを構える。
俺はおかしそうに笑いながらジャージを椅子に掛け、足を組み、金ちゃんの花を構えた
「ええよ、せんせ」
そう言って完璧に微笑む
そしてシャッターが切られた



「相変わらず完璧やな、白石」
そういってオサムちゃんは微笑んだ
「よし、次みんなで集まれ!小春!トロフィー持ちぃ。財前賞状!」
小石川のその声でみんな急にワッと動き始める
そして小春がトロフィーを持ってきてユウジと持ち椅子の左後ろにたち、財前が賞状を持ち、千歳に渡す。そして右肘おきに寄りかかる
千歳は金ちゃんと一緒に俺の足下に立て膝に座る
銀は小石川を連れて右後ろに立つ。
「よし、完璧やな!!おらいくで!1+1は?」
そのオサムちゃんのかけ声でみんなで声を合わせた





「「「「「「「「「四天宝寺!!!」」」」」」」」」





「1+1で四天宝寺になるわけないやろ!!!」




オサムちゃんのその突っ込みが部室内に響いた。





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