4-4



二つの茶色いおさげを靡かせながら少女は走った。
親友に会いに行くために。
最近学校に姿を見せなくなった親友が心配で少女は一人冬木の地へやってきた。
首に父から貰ったコンパスをぶら下げて

冬木の地のみに魔力が漂っているのはコンパスの反応で分かっていた。
だけどやすやすと家に帰るつもりは彼女に毛頭無かった。
親友が殺されてしまうかもしれない。
そう思うのは最近冬木市で連続殺人が起こっているからだ
しかも子供ばかりを狙った殺人である。
学校でも何人か死んだらしい。
何度かお葬式に出たこともある。

最初は「きっと何かの演技よね」と思ってた。
にしても大きなつくりだこと、とのんきに思っていた。
だけど月日が経つことに違うと分かる様になってきた。
これは本当なんだと気がついた。
そしてその日から彼女の親友は姿を見せなくなった。
どうしたら良い?と自分の騎士に問いかけたとき騎士はどうしたい?と聞き返した。
逢いに行きたいと答えると騎士はじゃあ俺があんたを守ると微笑み頭を撫でてくれた
その手は父とは違うけどどこか温かい手だった。
そして彼女は逢いに行くことを決めた。

今は姿が見えない私の騎士。
何かあったら姿を現してくれる
なら信じるしかない。

建物の建物の間の細い道を出ようとしたとき異様な光景が目に見えた
大学生くらいの男の人が自分と同じくらいの男の子の手を引いていると言う光景。
どこが異様と聞かれたら首を傾げるしかない
なぜかそう直感しただけだし今考えるとどこが異様だったのだろうか
そう思って元来た道をたどろうとしたとき姿の見えない騎士の声が聞こえた
『おい、見ろよ。お嬢ちゃん』
何?と振り返るとさっきの男性が連れていた人数が増えていた。
なんかおかしい。
最初の直感は間違ってなかったのだと気づくと彼女はバレない様に男の後を付けた。


付いた場所はバーの様なところ。
男が居ないのを確認して彼女は建物の中に入った。
何だろう此処はと周りを見渡したとき足に何かが当たった
何かしらと見たとき彼女は息を呑んだ
同じくらいの男の子の死体があったからだ。
早く帰らないとっと思ったが床で眠っていた子供達を見捨てられる訳もなくとりあえず見知った顔を探そうと動き出した。
すぐに見知った顔を見つけることが出来た。
探していた親友である。
親友の名前を揺すって起こす
お願い目を空けてっと祈りながら。
それほど時間が経たないうちに親友の目は自分の顔を映し出した。
いつも名前を呼んでくれる口が自分の名前を描いたとき彼女はほっとした
此処はどこ?と涙声で問われる疑問に凛はとりあえず逃げるのっと親友を逃がそうとした
その時一つの声が耳内に響いた
「あれ?誰か来てる。」
ギョッとして声の方を振り返った。
先ほど自分が付けていた男性である。
「ちょうどいいや、君もパーティに参加しない?」
そのパーティはそこの男の子になるって事でしょ?と問いかけることもなく彼女は恐れを抱いた瞳で男を見つめ返すだけだった
『お嬢ちゃん、あいつの腕輪で子供達が操られてる』
その声に彼女は思考が冷静になっていくことが分かった。
そして騎士の言うとおりに男性の腕を確認した。
確かに異様な腕輪が付いている
「ん?どうしたの?」
無邪気な声で男は問うた
その問いに答える事無く凛は右手の甲を左手でさすった
紅い文様が浮いてるその右手
静かに騎士の位を呟く
「おうよ。」
先ほどまで姿を見せなかった男は長い朱槍を握りしめて姿を現した
長い一束の青い髪を靡かせて凛を守る様に。
「狙うとこは・・・分かってるわよね?私のランサー。」
凛がそう告げると騎士は「おうよ」と微笑んだ。
男はすげー!今どうやったの?と感動し、状況が分かってないらしい。
騎士は「さぁ?どうやったんだろうな?」と微笑み男の腕輪目掛けて突きを素早く放った。
一回だけで見事に腕輪に直撃し、腕輪は壊れ男の手首から落ちた
それと同時に寝てた子供達は目をさました
不安げに声を上げる子、母恋しさに泣き出す子、状況を判断しようと周りを見渡す子と行動は様々であったが凛が一喝を入れるとみんな押し黙って凛を見た
「今の内に逃げるわよ!」
凛のその声にみんな立ち上がる。
それと同時にサイレンが耳に入った。
何事?と扉の方を見るとパトカーが来ていた。
凛と騎士、男性はやべっと隠れようとしたが降りてきた警察官にはその三人の姿は目に映ってなく、子供達をパトカーへと避難させた。
勿論映らなくなっているのは警察官の目だけではなく、彼女の親友も同じ事であった。
「あれ?凛ちゃんは?」
そう親友は疑問を唱えたが、警察官に乗せられてパトカーで搬送された。

凛がホッとため息を吐いたのとほぼ同時に自分の名前を呼ぶ聞き慣れた声が耳に入った。
扉の方に目を向けると黒いマントを羽織りワインレッドのスーツを身に纏った父の姿である。
あ、怒られると思った
だが前に立ちふさがる様に騎士が立った。目は父に向けて。
それを見ると父、時臣は驚く様に目を見開き凛の右手の甲を見た
凛は視線に気づいて瞬発的に右手を後ろに隠した。
「師よ。」
気にくわない兄弟子の声を聞いて凛はびくっと肩を揺らし、おのが騎士にしがみついた
時臣はその事に気がつかず、弟子である綺礼を見るとこくりと頷いた。
そしてから視線を無数の剣によって貼り付けにされている冬木の殺人鬼に目を向けた

凛も追うように男を見たとき男は大きく目を見開いてその目から涙を零していた
「だん・・・・な・・・・・?」
男の口は確かにそう奏でていた。
旦那とは誰だろうと思った時高笑いと共に金色の光が一つの人影を生み出していた。
「流石我が寵愛に受けるに足りる雑種!キャスターを倒したか!」
金色の光は愉快そうにそう高らかと声を上げた
キャスターとはたしか騎士と同じせいはいから召喚されたモノではなかっただろうか。
何故それをこの金色の男が知っているのだろうか
疑問に思いながら凛は消えないでと願いながら自分の騎士の服を強く握った
騎士にはその気持ちが伝わったのか凛の背に逢うように屈むと大丈夫と頭を撫でた
「あんたがっ旦那を!!!」
冬木の殺人鬼は噛みつくようにそう言った。
綺礼は「人の話を聞いていなかったのか」と呟いたのが聞こえた。
時臣は寂しそうに見つめ、彼に近づくと
「君の芸術にはあのキャスターが必要なのかい?」
問いかけた。
ゲイジュツってなんだろう。
そう思いながら凛はおのが父の背中を見つめた。
冬木の殺人鬼は声にならない声で呻いた。
その姿が見ていられなくて凛は己が騎士の身体に顔を埋めた
「・・・・話にならないね。綺礼、連れて行ってくれ。」
時臣がそう言うと綺礼ははいと返事を零し、冬木の殺人鬼を気絶させ、面を付けた人たちに彼を持たせ、その建物から姿を消した。

「――――・・・・凛、怪我はないかい」
いつもの優しい声色で時臣は愛娘に声をかけた
だが今の凛にはそんな父でさえ恐ろしくて仕方なかった。
今まで見たことのない冷たい父に出くわしたのだから仕方ないとも言える。
「リンに近づくんじゃねえ」
騎士は猛犬の様に低い声を吐き出しながらそう言った。
それを嘲笑うかのように金色の男は言った
「トキオミはそやつの父ぞ?猛犬は家族に近寄ろうとする父までも威嚇するか」
「王。」制止をかけるように時臣はその一文字だけ呟いた。
王と呼ばれた金色の男は「ふんっ」と鼻を鳴らすと言葉を紡ぐのを止めた
時臣はその様子に苦笑しながら凛の騎士と向かい合った。
「君がイレギュラーのランサーかい?」
そう問えば彼はおうよと答えた。
いれぎゅらあって何だろうと頭の端で凛は考える。
彼は凛が魔術の勉強をしているときにうっかり召喚してしまった者である。
彼自身あのとき驚いていたが、凛の名前を聞くとなるほどと呟き自分の真名と位を彼女に預けた。
だから彼女は知らなかったのだ。
彼がイレギュラー召喚された聖杯戦争出場に必要な英霊だと
彼の口から聞いたセイハイと聖杯が同じものだと彼女は知らなかったのだ。
時臣はそれだけ知るととりあえず後は我が家で聞こう。と言って娘と騎士に背を向けた。
もしかしたら便利に使えるかもしれない。
彼はそう思って・・・・





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -