sprinter 貴方と出逢い、ずっと傍に居続けたいと願ってしまった。 それは叶わない願いだと知っているのにその願望は止められなくてどうしようもなかった。 私達に出来ることなど当に知れていてあの方の実験体になる、ただそれだけの為に俺たちは生きている。 だけどもしもあの方が居なくなくってしまっても、もしもみんなが消えていなくなってしまっても、僕は消えることはなくていつか俺一人になってしまうんじゃないかと思うと怖くて怖くて仕方ない。 それでも貴方が傍で笑っているだけで、楽しそうに解体してるだけで、傍にいるだけでその恐怖を忘れることは出来たんだ。 私の心の叫びは貴方に届かなくてもそれだけで僕はとても救われたんだ。 きっと、僕は貴方に恋をしているのだろう。 きっと、俺は貴方を愛しているのだろう。 そんな人間じみた心が感情が作り物である俺に宿ってたなんて知ればあの方はどう思うだろうか、 でもそんなものは関係なく、興味もない。 それにこれは私の中で大事に取っておきたい秘密である。 せめて言うならば僕の好きなあの人だけに。 「勿論、言うつもりもないんですけどね、」 「どうした、シャフト」 小さく呟かれたその声を拾ったのか彼は眠そうに開かれた目をこちらに向けた。 「いえ、物思いに耽っていただけです。なんでもないですよ」 そう答えれば彼は不思議そうではあるが興味なさそうに「そうか、」とだけ言って俺の前を歩き出した。 『ホント、凄い物思いに耽ってたね?シャム』 そう脳内に語りかけられる声に思わず苦笑した 別に彼女に筒抜けなのを忘れていたわけではないが指摘されると恥ずかしさが倍増する。 (でもこれは本音ですから、) そう意志が繋がっている少女に返せばだろうね、と返ってきた。 それに本音じゃなかったら筒抜けにならないでしょうし、 『まぁ、いいんじゃないかな。シャムの道が開けてきて俺は嬉しいよ』 (ありがとうございます。リカルド) そう少女に礼を告げて走り出した。 ―――――――― Kalafina 『sprinter』より |